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【江刺の稲】
“古臭い”円盤式を紹介する理由
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 第110回 2005年04月01日
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今月号のおすすめ商品REVIEW(88ページ)のポテトプランタを見た北海道の読者には「今さら円盤型を取り上げるの?」と、笑われるかもしれない。たしかに北海道では全自動(カッティングタイプ)が当たり前。それも4畦タイプが主流だ。全自動タイプならほとんど補助作業者の手間を煩わせることもなく、イモ切りもプランタが植付けと同時にやってしまう。
十勝農機は北海道で圧倒的シェアを持つプランタメーカーであるが、同社でも円盤型は数えるほどしか生産していない。筆者も全自動プランタを否定するわけではない。その経営的有効性があればこそ、北海道のユーザーは全自動を選んでいるのである。全自動に関心のある向きは同社に照会されたい。
しかし、“古臭い”円盤型(半自動)を紹介するのには理由がある。
まず、50万円程度で買える半自動タイプでも一日に1ha弱の仕事ができる。手間は必要だが能率的にはこれでも十分ではないか。さらに、半自動タイプの方が切りイモや全粒播種の場合には作業精度が高い。とりわけ、初めて大面積のジャガイモ作りに取り組む人ならば、収量に影響を与える種イモの浴光育芽や種イモ切りを確実に行うべきだ。
また、府県の農機店では全自動タイプの技術サービスを期待できない。その意味からも府県の読者には構造の簡単な半自動を勧めたいのだ。
北海道の読者にも考えていただきたい。我が国では種イモの品質が他の先進国と比べて低いという事実をご存知だろうか。その改善のためには種苗管理制度の改革だけでなく、種イモの品質基準を厳しくし、さらに病害の拡大原因となる種イモ切りをなくしていく必要はないのか。そして、種イモの規格を40~60gのS球とし、それを全粒播種にする技術体系を日本でも標準としていく。それを増収を望む生産者の声として上げていくべきではないか。
であるなら、いかに現在の全自動カッティングプランタが優れた技術だとしても、さらに将来の全粒播種に対応する機械の改良もその方向で進められるべきなのである。
本誌は麦・大豆だけに頼る転作の将来性に危うさを指摘してきた。同時に基盤整備された広大な畑地が耕作放棄されていくなかで、府県の転作田や畑地で行う北海道型の“畑作野菜経営の可能性”を語ってきた。なかでも消費が伸びており、機械化による省力と増収効果の大きいジャガイモを手始めにした畑作野菜経営に注目しようと呼びかけてきた。
それを実証するために、一部の読者とともに「農業経営革新クラブ」という読者ネットワークを作り、“経営実験”を行ってきた。作期の異なる地域の経営者が組むことでハーベスタを使い回しにし、経営コスト軽減するというテーマにも取り組んできた。この“経営実験”はハーベスタでの機上選別だけで全量荷受けを頼めるカルビーポテト(株)の協力で行ってきた。また、スガノを始めとするメーカーの支援も受けてきた。円盤型を敢えて取り上げるのも、この体験の中からなの意見なのである。
ところで、必ずしも契約生産ができるとは限らないが、この業界を超えたネットワークに参加を希望される方は本誌編集部まで問い合わせられたい。また、弊社では昨年の夏よりカルビーポテトの契約生産者を対象にした「ポテカル」というジャガイモ専門誌を編集・販売している。購読希望の方は、合わせてお問い合わせ願いたい。
十勝農機は北海道で圧倒的シェアを持つプランタメーカーであるが、同社でも円盤型は数えるほどしか生産していない。筆者も全自動プランタを否定するわけではない。その経営的有効性があればこそ、北海道のユーザーは全自動を選んでいるのである。全自動に関心のある向きは同社に照会されたい。
しかし、“古臭い”円盤型(半自動)を紹介するのには理由がある。
まず、50万円程度で買える半自動タイプでも一日に1ha弱の仕事ができる。手間は必要だが能率的にはこれでも十分ではないか。さらに、半自動タイプの方が切りイモや全粒播種の場合には作業精度が高い。とりわけ、初めて大面積のジャガイモ作りに取り組む人ならば、収量に影響を与える種イモの浴光育芽や種イモ切りを確実に行うべきだ。
また、府県の農機店では全自動タイプの技術サービスを期待できない。その意味からも府県の読者には構造の簡単な半自動を勧めたいのだ。
北海道の読者にも考えていただきたい。我が国では種イモの品質が他の先進国と比べて低いという事実をご存知だろうか。その改善のためには種苗管理制度の改革だけでなく、種イモの品質基準を厳しくし、さらに病害の拡大原因となる種イモ切りをなくしていく必要はないのか。そして、種イモの規格を40~60gのS球とし、それを全粒播種にする技術体系を日本でも標準としていく。それを増収を望む生産者の声として上げていくべきではないか。
であるなら、いかに現在の全自動カッティングプランタが優れた技術だとしても、さらに将来の全粒播種に対応する機械の改良もその方向で進められるべきなのである。
本誌は麦・大豆だけに頼る転作の将来性に危うさを指摘してきた。同時に基盤整備された広大な畑地が耕作放棄されていくなかで、府県の転作田や畑地で行う北海道型の“畑作野菜経営の可能性”を語ってきた。なかでも消費が伸びており、機械化による省力と増収効果の大きいジャガイモを手始めにした畑作野菜経営に注目しようと呼びかけてきた。
それを実証するために、一部の読者とともに「農業経営革新クラブ」という読者ネットワークを作り、“経営実験”を行ってきた。作期の異なる地域の経営者が組むことでハーベスタを使い回しにし、経営コスト軽減するというテーマにも取り組んできた。この“経営実験”はハーベスタでの機上選別だけで全量荷受けを頼めるカルビーポテト(株)の協力で行ってきた。また、スガノを始めとするメーカーの支援も受けてきた。円盤型を敢えて取り上げるのも、この体験の中からなの意見なのである。
ところで、必ずしも契約生産ができるとは限らないが、この業界を超えたネットワークに参加を希望される方は本誌編集部まで問い合わせられたい。また、弊社では昨年の夏よりカルビーポテトの契約生産者を対象にした「ポテカル」というジャガイモ専門誌を編集・販売している。購読希望の方は、合わせてお問い合わせ願いたい。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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