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Opinion

信頼できる数字、できない数字

  • 岡田誠二
  • 2005年03月01日
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私は民間企業の研究所で25年間ハイテク技術の開発を手掛けてきました。仕事は、100万分の1mの世界。もちろん肉眼で見ることはできません。従って、仕事の成功と失敗は、機械による測定値という数字に頼らざるを得ませんでした。ですから、ある数字を信頼するかどうかの判断は、仕事の成否を決定する重要な判断となります。
 私は民間企業の研究所で25年間ハイテク技術の開発を手掛けてきました。仕事は、100万分の1mの世界。もちろん肉眼で見ることはできません。従って、仕事の成功と失敗は、機械による測定値という数字に頼らざるを得ませんでした。ですから、ある数字を信頼するかどうかの判断は、仕事の成否を決定する重要な判断となります。

 今、ある実験を実施したとします。測定値は得られますが、その数字が信頼できるかどうかわかりません。そこで同じ実験を何度も繰り返し、最も信頼できる測定値を見つけ出します。この段階に来れば、たとえ目に見えずとも、100万分の1mの世界で何が起こっているのか、数値を通してつかめるようになります。

 たとえば一回目の実験で測定値「1」が得られたとし、何回かの実験の結果、測定値「1」が確からしいことわかった場合、同じ「1」でも一回目の「1」は信頼のできない数字、何回かの実験の後の「1」は信頼できる数字という違いがあります。数字が信頼できるかどうかは、その背景にあるカラクリを見つけ出せるかどうかにかかっているのです。

 私達の生活には多くの数字が関与しています。たとえば、物価、金利、気温、降雨量等々があります。また、数値を信頼するか否かの判断で利益を受ける場合もあれば、損失を被る場合もあります。

 特に、セキュリティについては十分に考えておく必要があります。ゴルフ場を舞台にしたキャッシュカード偽造事件が摘発されました。キャッシュカードの内容はスキミングという手法で盗み出し、不正に取得したゴルフ場のロッカーの暗証番号を使って預金を引き出していました。キャッシュカードとロッカーの暗証番号を同じにしていた人がいかに多くいたか、を思い知らされました。

 暗証番号に選び出す数字は、自分にとっては最も信頼性があり、他人にとっては最も信頼性のないもの、つまり究極的には自分しか知らない数値であることが鉄則ではないでしょうか。

 キャッシュカードの暗証番号は4桁ですから、全部で1万組の場合があります。この4桁の数字に誕生日の月日を選択すると366組しかありません。ある窃盗犯が暗証番号のわかっていないキャッシュカードを使うとします。そのカードの暗証番号に誕生日が用いられていた場合、窃盗犯自身の誕生日を暗証番号として入力すると、1/366の確率で現金を引き出せることになります。これに対して、誕生日で構成される番号を避けると、現金が引き出せる確率は1/9634となります。

 ですから、電話番号や車の登録ナンバーなどは誕生日よりもセキュリティーの度合いは高くなります。しかし、これらは一般に開示されたものですから、犯人がどこでこの情報を得るかわかりません。

 自分自身しか知らない数字には、何があるでしょうか、たとえば、出生時の体重、学生時代の学籍番号、興味ある歴史的出来事の西暦等々ではセキュリティーの度合いが格段に高くなると言えます。

 主婦を対象にした内職斡旋や資格取得など、おいしい話を信じて大損する事件も多発しています。これとても、悪徳業者から提示される期待できる収入などの数字を鵜呑みにしてだまされることが多いようです。教材費用や期待される収入など自分でその妥当性が判断できない数字にについては消費者センターなどに問い合わせ、その信憑性を確認しておく必要があります。

 この他、年金や社会保険でも保険料や加入期間などの数字が重要な役割を演じています。数字の裏にあるカラクリを十分に知り、信頼できない数字を信頼できるものにしておかないと、取り返しのつかない不利益を被ることになってしまいます。

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