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座談会

農業の周辺から農業と自分自身を語ろう(中)
一瞬の金儲けだけを目指す農業の企業化なら明日はない

福祉国家というのは主体性を無くさせていく仕組みか?


 小松 藤田さんも自治体に頼まれた第3セクターの社長をしているのですよね。

 藤田 それを引き受ける時に申し上げたのですが、議会の長が専務になるとか、姥捨山のような3セクにはしていただきたくない、必要のないもの売るとかもね。村の生産物を加工して、ちゃんと利益があがって、一年目で赤字がなくなるということはないにしても、将来経営が安定したら、私は社長を降りたい、と(笑)。

 昆 今の話もあたりまえのことなんですけれどもね。

 小松 しょせんは人の金だから、ということでしょう。日本は福祉国家でやってきたでしょう。

 昆 ははあ。

 小松 金をかき集めて、サンタクロースのように配ってやるぞと。福祉国家っていうのは、どう逆立ちしたって主体性とか経営者意識を生まないですよ。福祉国家というのは国民統合のための文化戦略策だと思うけど、統合されるということは主体性を無くさせていく仕組みじゃないですか。3セクの宿なんて、出向した人間の都合でしか営業されていないから、サービスなんてない。働いている人間も人の金だから粗末にしてしまう。

 昆 だからそこで、お客さまという言葉を使おうといっているんですよ。それで、ありがとうございますといった回数が多いほど、自立できていくんじゃないかと思うんですよ。自分の体験からも。生きている実感もある。お金は結果ですよ。でも良い結果をだそうとして人は必死になる。

 藤田 自分のやったことが成果として帰ってくるというか、労働の結果がちゃんと見えてくるというか、ちゃんと循環することって大事だと思う。第3セクターじゃないけど、赤字なのか黒字なのか知らされずに、自分の働いたことの結果を何も見えなくて。

 小松 つまらないよね。

 昆 農業の中で、今まで篤農がもてはやされて来たわけでしょう。彼らはまさにそう誉められて搾取され続けてきた。誉め殺しです。もう誉められるな、と。

 小松 偉いね、といわれてもボランティアじゃないからね。

 昆 やっぱり、お金のことがいえないとダメですね。だけど、世の成功者といわれる人の人生を聞いたりしているとね、ちゃんとした成果を上げている入って、案外、お金のためには働いていないですよ。

 小松 だからといって、お金なんかどうでもイイというわけでもない。

 昆 バブルがはじけたときに思ったのは、ものすごくマトモな商店主や自営業者やお百姓さんが、銀行なんかに乗せられてひっかかっている。なぜこんな人がと思うような人もいる。それをノセた銀行もひどいなと思うけど。大企業の雇われ経営者でもなく、ちっちゃな自営業者の健康さやマトモさってのが大事なのではないか。百姓を含めた自営業者がマトモであってくれる社会って、すごく健康な社会なんじゃないかな。彼等は力ッコ付きの「正義」でではなく、「あたりまえさ」で判断し、生きるから。

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