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古典的資本主義を後追いする農業企業論ではだめだ
昆 地力という概念があるでしょう。世の中の人はなかなか理解しないけど、すぐれた農業経営者は必ずそれを持っている。銀行や農協なんかに貯金しなくても地力に貯める、あるいは地力を高めることにこだわっている。それは土の地力ということもあるけど、お客や取引先や社会との関係なんかすべてを含んだ経営力という意味のようなもの。
ところが、今、行政のリーダーたちが、新農政だとかいっているのは、日本の産業界が昭和30年代に捨てたような論議を、農家に押し付けようとしている。話にならないようなことをね。
小松 農業の企業化は単なる金儲けの手段としか教えていないのね。もっと企業化のためのスピリチャアルなものとか、事業のための解放性・持続性のようなことをいわないで。これからは「儲かる論」が必要だとね。
藤田 金さえ儲かればいいのか、と。
小松 ドラッカーが『ポスト資本主義』でいっているんだけど。資本主義というのは、既に崩壊しつつあるんだよね。資本主義ではなく、違ったスタイルの世界の在り方に移行している。農業が、古典的なスタイルの資本主義を後追いしているところがあって、しかし20年ぐらい前から、資本主義というものはなくなってきてるわけです。おそらくもっとこれからドラスティックに変わってきて、もっと違う世界になってしまうと思うんですね。資本が国家を越えていって、国民国家みたいなものが崩壊するだろう。グローバルになればなるほど、リージョナリズムと部族主義が大事になってくる。彼がいっているのは、イタリアのある地方の、文化を大事にする人達、というような。たとえば、俺は米沢郷でこういう暮らしをして集まって生きていっちゃおうぜと。リージョナリズムや部族主義がなくて、ただグローバリズムなら、崩壊するんじやないですかね。
藤田 画一社会ですね。
小松 ある記者が「地球市民」ということで話したいというのだけど、「地球市民」いう言葉はおかしいんじゃないかと思うんです。実際に海外国際交流などやっている人をみんな見ていると、都会の人間がアジアの農村に行っていろんなことやって、あたしたち地球市民だね、とやっている。市民というのは基本的に、自分たちでコミュニティを作る人間を市民といいますよね。それが単なる都市漂流民がね、アジアとかアフリカに行って井戸を掘ったりしてる。もっと本拠地を持った人を語れと記者に話した。
藤田 NGO漂流民ね。
小松 本当に地球市民というならね、農村とか。
藤田 共同体とか。
小松 そういうものを大事にする。
藤田 存立基盤がはっきりしていて、本拠地がある。
昆 同じ問題が日本の農業を語る時や人にもあるわけですね。
(続く)
小松光一
昭和18年北海道生まれ。千葉県農業大学校教官を経て、御茶の水女子大学講師、おびひろ農業塾塾長。アジアと日本の農村交流と自立・連帯をテーマとして各地の青年農家たちと農村を中心とした地域づくり、国際化に取り組む。著書に「若きドン・ファーマヘのメッセージ」「私の青年団改造論」「おもしろ農民への招待状」「ヒト、ムラ、マツリの地域論」など。
藤田和芳
昭和22年岩手県生まれ。有機農産物産直グループ・大地を守る会会長、大地を守る会の生産者会員が作る農産物を流通する(株)大地社長。消費者への宅配の他、量販店などへの供給もすすめる。農業をはじめエネルギー、食糧、医療、環境、教育などの諸問題に対しても様々な活動をしている。農林水産業の復権を目指す全国ネットワーク・DEVANDA(デバンダ)代表。アジア元気大学理事長、全国学校給食を考える会顧問。
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