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土門「辛」聞

無謀!新潟県コシBL全面切り替え強行

土門剛の切抜帳

【(1)農業団体に遠慮? 食料自給率に新指標】

 2月10日付け日本経済新聞は、農業政策の中期的な指針を示す「食料・農業・農村基本計画」の骨子案を紹介。食糧自給率に農作物の金額を反映した新指標を加えるほか、ばらまきとの批判が強い補助金を重点化したり、株式会社の農業参入を進めたりする、の三つがポイント。3月に計画を正式決定すると前打ちしてきた。

 自給率の見直しは、政治におよび腰の官僚が思い付く発想だ。政治や農業団体から自給率向上を約束させられ、それを実現するためにと補助金をばらまかされてきた。それを改めるためには、低い数字をかさ上げすればよいと役人が考え付いたようだ。

 そこで「新しい食糧自給率の指標は国内農家の出荷額などから算出する」という方法を編み出してきた。これだと従来の算出法に比べ数字がグーンと上昇。政治や農業団体の圧力をかわせると判断したようだ。同紙は「野菜や果樹の生産量が反映されやすく、付加価値の高い有機農作物の生産を後押しできる」と農水官僚の言い分をそのまま紹介している。

 そもそも食糧自給率とは何ぞやということを考えてみるべきだ。食糧を他国に頼らないということは独立国として対面を保つ最低限のことと国民の合意を得てきたはずではなかったか。そのために自給率向上を農業政策の今回に据えてきたはず。それを逆手に取って政治や農業団体が補助金ばらまきの口実に使ったのはとんでもない話だが、その政治や農業団体に遠慮して算出方法を変えてくるのはうなずけないことだ。


【(2)耕作放棄地をプロ農家へ】

 戦後農政の大失敗は、農地権益に寄生する零細農をやたら温存し、その連中を束ねる農業団体に各種権益を保証し、政治家がこの連中に補助金をばらまいて集票基盤にしてきたこと。その一部はヤミ献金で還流させてきた。それを見て見ぬふりをしてきた官僚組織も、失敗の片棒を担いでいた。

 2月11日付け毎日新聞は、「食料・農業・農村基本計画」に、「長期間使われていない耕作放棄地の活用策を盛り込む方針」と報じた。「プロ農家」(担い手)への農地集積を目的とした農地改革の一環で、耕作放棄地に知事が半強制的に賃借権を設定し、市町村などを通じて担い手に貸し出す」と解説した。農水省は来年度の制度実施に向け、来週中にも関連法令の改正案を国会に提出する。

 農地は立派な私有財産である。この問題を論じた食料・農業・農村政策審議会(農水相の諮問機関)の企画部会では「私有財産権を保障した憲法に抵触する可能性もある」という声も出たが、「農地の公共利用が目的で、抵触しない」と判断した。

 農家の高齢化を背景に、耕作放棄地は近年全国的に急増。中には産業廃棄物が投棄されるなどの問題も多発。同紙は「現状では、農業委員会の再耕作指導に応じない農地所有者がいても、公的機関の農地合理化法人と売買協議を行うよう市町村長が通知する程度の対応しかできない」「新制度では、売買協議が不調に終わった場合、都道府県知事が耕作放棄地を市町村や合理化法人、特定農業法人に売却するよう調停できるようになる。さらに、調停も不調に終われば、知事が賃借権を設定し、市町村などに貸し付けることができる」と解説。

 権益に寄生する偽農民追放は大賛成だ。


【(3)輸入黒豚偽装問題で全農離れも必死か】

 もはやこの組織には、農水省もほとほと愛想が尽きたかのようだ。全国農業協同組合連合会、全農のことである。

 ことの発端は、「全国農業協同組合連合会の子会社・組合貿易が仕入れた輸入黒豚が鹿屋市の業者によって鹿児島産に偽装されていた問題で、農水省は25日、新たに全農自らが1999年度以降、都内の商社から米国産黒豚肉を仕入れて販売していたことを明らかにした。全農も同日、同省に提出した業務改善報告でその事実を認めた。同省は国内農業の振興を目的とした農協法の趣旨に沿わないとして、全農に対し輸入事業の在り方を見直すよう異例の指示をした」(南日本新聞1月26日)ことだった。

 新聞が伝えぬ楽屋話を一つ。問題が発覚した時、全農は「あれは子会社がやったこと」と逃げた。それを聞いた島村宜伸農水相はカンカンに怒った。だが、それが全農に伝わっても、田林聡理事長は「国産から輸入品までの取引先の品ぞろえの要請にこたえ、国産畜産物の販売を補完するため。輸入自体に問題はない」(同紙)と開き直った。全農にすれば農水相や農水官僚など何も怖くないといった態度のようである。

 島村農相は同日の閣議後の記者会見で「不祥事が重なると組織が壊れかねない」と全農の体質を批判した。とにかく全農の不祥事はすさまじい。BSE騒動が起きた2001年以降、農水省から業務改善命令が出されるのは今回で6度目のことだ。

 今回の不始末はそう簡単に収拾が着きそうにない。やがて春から夏にかけて理事会や総代会が控えている。全農幹部は針のむしろに座らされるが、一番厄介なのは農協や経済連の「全農離れ」である。

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