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昆 しかし相当な負担ですね。
阮 特に農業税は凶作でも税額が変わらないので、農家は出稼ぎに行ったり、借金をしたり、ひどい場合は売血までして払うと言います。
こうした二重の社会構造と農家に厳しい税制の結果として、農村と都市とで、世界最大レベルの所得格差を生んでいるという状況でした。そして、大量の余剰労働力が農村に集中している。
昆 改革は指針だけでなく、具体的なものだったのですか。
阮 そうです。まず、農業税は今回全国的に8.4%から1ポイント引き下げました。また農業特産税は葉タバコを除いて撤廃しました。
さらに、中部地域13省の農業税は3ポイント引き下げ、黒竜江省と吉林省では農業税免除のテストを始めました。今後5年をかけて、農業税を全国的に廃止する計画です。
改革のもう一つの柱は、穀物生産農家への直接支払いの導入です。直接支払いは、これまで先進国しか導入していません。発展途上の中国がこれを導入したのは、食糧不足の国として、換金作物よりも穀物生産に力を入れる必要があるからです。農家に利益を与えて、穀物生産に対する意欲を持ってもらうのです。
これらの改革のすべてがスムーズに行くとは思いませんが、近代化への本格的なスタートを切った意義は大きいと言えます。
昆 その意義とは、どのようなものですか。
阮 私は、「農業」と「農家」は、ある意味で対立関係にあると思っています。零細農家をたくさん抱えるアジアの国々の場合、国としての農業の競争力を高めるということは、個々の農家にとっては経済的に圧迫されることでもあります。逆に農家の利益を守るなら、農業の競争力を低下させなければいけない。
これまでの中国は、まず「農業」を取った。しかし今は、「農業」も大事だが「農家」の利益も考えざるを得ないという段階に来ていて、2004年はそれに対して具体的な手を打ち始めたわけです。政府がそう考えたことは、喜ぶべきことですし、期待も集まっています。
アジア経済は一体化する 日本は強みを発揮すべき
昆 ところで、沿海地域は中部地域13省とは違う農政、農業を展開していますね。
阮 沿海地域全部がそうではありませんが、会社組織で農業を行っているケースなど、近代的な農業を目指しているところがあります。
取り組んでいるのは、穀物よりも換金作物です。換金作物は栽培技術も必要です。また、もっと重要なのは、作ったものを消費者に届ける段階のノウハウです。このため、大手企業、とくにスーパーマーケットと手を結んでいる企業の農業への参入も見られます。
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阮蔚 ルアンウェイ
(株)農林中金総合研究所
基礎研究部副主任研究員
1982年上海外国語大学日本語学部卒業。92年に新華社を退職し、来日。95年に上智大学大学院経済学修士課終了。同年㈱農林中金総合研究所副主任研究員。専門は農業を中心とした中国経済。著書に、「東アジア市場統合への道」(共著、勁草書房、2004年)、「WTOと中国農業」(筑波書房、2003年)などがある。
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