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日本農業にとっては、この沿海地域が競争相手となるでしょう。
ただ、この地域には日本企業が直接資金を出したり、指導に行ったりしています。残留農薬の問題がありましたが、その後むしろ日本企業との連携を強め、トレーサビリティを導入するなどして、消費者に安心できる農産物を提供できるための努力をしています。
私は、これらの地域には、日本のメーカーや流通などだけでなく、日本の農家も何らかの形で入って行けばいいと思うのですが。
日本の農家が中国に来ることを、中国は歓迎します。土地を借りて作るとか、あるいは現地の人と一緒に経営するとか。日本だけでなく、米国でもロシアでもウェルカムです。現実には今、台湾の農家と米国の企業が入ってやっています。
これからアジア経済の一体化は間違いなく進むと思います。私は、日本の農業の強みは、そういう場面で発揮できると思うのです。
昆 たとえば、日本のイチゴや果樹の一流の技術を持つ農家が、日本国内にとらわれず、中国やオーストラリアなどで条件のいいところを探して取り組めば、世界中から求められる商品ができるはずですね。
阮 その通りです。私は常々、農業は先進国型産業だと考えています。これからの農業には優れた品種が不可欠ですが、品種改良イコール技術と資金力―これは先進国でないとできない。そして、いくらいいものを作っても、消費者に届かなければ意味がない。その意味で、流通、マーケティング能力も必要ですが、これも先進国が持っている能力です。
そう考えると、今、日本の農業が世界で競争力を発揮していないのがとても不思議に思えます。
米国と比べれば、確かに日本の耕地面積は狭いでしょう。また、アジア各国に、絶対的な耕地面積が日本よりも広い国もあるでしょう。しかし、農業労働力の能力では、日本はアジアの中ではトップクラスです。
それと、アジア各国は、まだ食糧問題を解決できていないということも念頭に置いて欲しいと思います。しかも、これからアジアの人口はもっと増えます。その過程で、必ず食糧の問題が起きます。そして、これ以上耕地面積の拡大は不可能です。つまり、これからは反収増を実現していかなければならない。これには技術力が必要です。そこで日本に期待が集まるはずなのです。
これからは、日本の農家がアジアの中で起業して、日本がリーダーシップを発揮していくことがとても重要なことだと思います。
昨今、日本の自給率の低下が話題になっていますが、そういった問題も、アジア経済の一体化の中で考えていくべきでしょう。たとえば中国で、日本の農家が投資して作っているもの、しかも種苗も日本のものという場合、それはもう日本が生産したものとカウントしていいのではないでしょうか。
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阮蔚 ルアンウェイ
(株)農林中金総合研究所
基礎研究部副主任研究員
1982年上海外国語大学日本語学部卒業。92年に新華社を退職し、来日。95年に上智大学大学院経済学修士課終了。同年㈱農林中金総合研究所副主任研究員。専門は農業を中心とした中国経済。著書に、「東アジア市場統合への道」(共著、勁草書房、2004年)、「WTOと中国農業」(筑波書房、2003年)などがある。
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