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競争にさらされなければ 農業は強くはなれない
昆 しかし、日本の農業界には、アジア各国に日本の技術や種苗が流出して、それがやがて日本に安く入ってくることに対する恐れというものが、根強く巣くっているのです。
阮 各国の農産物は、産地や品種ごとに、なんらかの形で棲み分けができると思います。
先ほど、中国では所得格差が大きいとお話しましたが、その高額所得層には、日本産の農産物に対する需要が非常に強い。また、私は台湾で日本の農産物がたいへん高い価格で売られているのを見ましたが、よく売れていました。他の国でも同じ傾向を見ています。
中国の所得格差は、今後是正していかなければいけないことですが、市場としては、中国はこれからさらに有望でしょう。中国の人口は現在約13億人で、今後最大16億人まで増えると言われています。そこまで需要が増えるわけです。
繰り返しますが、これからアジア経済の一体化は避けて通れないことです。しかし、その中で、日本の農産物はとても強い競争力を持つはずです。また持つべきです。
昆 競争を恐れる風も、日本の農業界には根強くて、それも問題です。
阮 中国の政策をもう一度考えてみてください。今回、中部地域13省の農業税を軽減するなどの措置を取ったのは、食糧を海外から調達することが量的に不可能な中国が穀倉地帯を守るためです。しかし、その一方で沿海地域を開放して、そこで海外から来た生産者と競争させている。
これは、競争させないと農業は強くならないということを、中国政府がよくわかっているからです。この沿海地域で勝つことができれば、世界のどこへ行っても勝てる。そう考えているのです。
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阮蔚 ルアンウェイ
(株)農林中金総合研究所
基礎研究部副主任研究員
1982年上海外国語大学日本語学部卒業。92年に新華社を退職し、来日。95年に上智大学大学院経済学修士課終了。同年㈱農林中金総合研究所副主任研究員。専門は農業を中心とした中国経済。著書に、「東アジア市場統合への道」(共著、勁草書房、2004年)、「WTOと中国農業」(筑波書房、2003年)などがある。
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