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【レーザーレベラーの栽培成果報告】
増収もした。本当の価値は大規模水田で平らな作ができたこと(川島郁夫氏・大潟村)
- 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
- 1996年12月01日
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営農作業としての作土均平の価値
カリフォルニア農業では、農作業はレーザー光線を使う圃場均平(勾配設定)作業から始まる。稲作だけでなく野菜作においてもだ。精度の高い圃場均平作業、明渠掘り、作業道や畦の造成などが、いわゆる基盤整備事業での土木工事としてではなく、あくまで農家の営農作業として行なわれている。
広大な面積で水の利用が限られる農業。しかし大規模でも日本をはるかに越える精密で集約度の高い作物栽培が行なわれるカリフォルニア農業。レーザー利用の圃場均平化技術が営農技術として利用されることが、それを可能にしているともいえる。それが広大な水田での水管理や、正確な勾配を設定することでの畦間潅漑による野菜作を実現してきたのだ。
レーザー光線を使った圃場均平化技術自体は、我が国の農業土木技術として特に目新しいものではない。しかし、現在のブルドーザによる技術は、あくまで水田の「表面の水平」を出すだけの「上木技術」である。
基盤整備事業などで行なわれる工事では、あらかじめ表土をはぎ取り、耕盤を平にしてから表土を元仁戻して均すという作業工程がとられる。その時の作業基準では、出来上がりでプラスマイナス5mの均平であればよいというようなことになる。しかし、そうやって造成された水田も1作や2作で10m、20mといった高低差が生じるという場合も少なくない。
また、土木業者は、均し作業がどんな雨の後だろうが、どんなにぬかるんでいようが作業をするかもしれない。業者にしてみれば、そうでもしなけりや作業日程が組めずに「商売上がったりだ」とボヤクだろう。
水田にするために踏み固めはしたとしても、農家であれば、雨の翌日に機械を田に入れてワザワザ泥を練るような真似をするだろうか。練った壁上が水を通さないように、田の土を壁土状態にして何とも思わぬ土木作業を、なんで農業の基盤整備なんていえようか。基盤整備をしたら、暗渠を入れたはずなのに排水が悪くなったなんて話がよくあるのはそのためだ。
作物を育てる圃場を作るのが農業基盤整備であるとするなら、均一な作土の深さを考えず、心土の状態への配慮のない農地造成だったとしたなら、広く形も良くなって機械は走りやすくなったとしても、それはトラクタやコンバインのレース場を作っているだけではないか。さらに、基盤整備事業をしても冬の間に水田の凸凹を均す作業に農業経営者はどれだけの手間をかけさせられているか。さもなくば、その均平を図るために過剰な代かきをせねばならず、その結果栽培に悪影響をもたらしているケースも少なくない。
沢山の税金を使い、農家にしてもその後何年にも渡って償却費を払うのである。
スガノが、わざわざ「不練りレーザー耕法」などという余り聞き慣れない言葉を付けて、このレーザーによる「作土均平」の技術を普及させようとしているのは、基盤整備工事での土の練り込み、砕土・代かき時の過剰な土練りの栽培に対 するマイナスを考えたゆえなのだと思う。そして、この「不練りレーザー耕法」を土木作業としての基盤整備事業としてでなく、農家自身による「営農」レベルの技術として定着させようとしているのも、簡易的な方法であれ、農業経営者自身による「田作り」の作業があってこそ農業生産の安定化が図れるからと考えるからだ。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
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