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編集長インタビュー

提案力で大手支えてきた中小企業に逆境の中に生き残る姿勢と術を学べ

中沢 一時、行政が金型産業を保護しようとしたことがありました。金型産業の工場が多過ぎ、過当競争でダンピングをする危険性があったからです。機械を補助金で買い取って工場の数を少なくすればダンピングもなくなるという目論見があったのでしょう。

 でも結局、産業界自身が「やめてくれ」と拒絶をした。保護されたら自分たちが弱くなるということを知っていたからです。

昆 1970年代でしたか、福井県の繊維産業が衰退し、職を失った従業員が織機を壊す様子がテレビで流れました。農業ではあんなことをやっていない。そして「あの人たちを守れ」などと言う人もいませんでした。

中沢 でも結局、福井の繊維産業は生き残りました。今でも高級な女性用下着はすべて福井で作られます。微妙な曲線を出すための縫製技術が福井にしかないから、外国にも移転しない。苦しい時もやめなかった人、どうやったら残れるかを必死で考えた人だけが残っているのでしょう。

昆 どの業界も浮き沈みがあり、変化がある。それが当たり前なのに、農業は守れと言うのはおかしなことです。

中沢 商業でも似たところがあります。「シャッター通り」などと言われている駅前商店街を活性化できる人は、「よそから来た人」「一度外に出てUターンして来た人」、そして「女性」です。

 一方、商店街を守ろうと振興組合などを組織し、お茶を飲みながら昔話に花を咲かせているような人たちは、自分たちが本当に困っているわけではないから改革はできません。

 それと比べ、日本の製造業は外国と比較すると優れています。戦後、一貫して生き残るための日々を送って来たということだと思います。まさに自己改革の連続です。

 私はトヨタに関する本を書いていますが、「トヨタとは何か?」という定義を突き詰めて、私が下した結論は「いつも変化している組織」ということです。ですが、実はずっと変わらないものもある。それは「変わろうとする意志」です。

昆 生き残る体質を培って来たかどうかによって、中小にも大手にも、強い企業と弱い企業がある。

中沢 企業の大小だけでなく、業種でも同じことが言えます。製造業という大きなくくりで見ると日本は強いけれど、中身を見ると、車では強いが、家電一般はすでに弱い。

 これからは大小とか業種とか、大きなくくりで強いとか弱いとか語るべきではない。一社一社の取り組みがどうなのかということが問われる時代です。

(まとめ・青山浩子)

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