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本誌読者にも、そのユーザーが多かった。それらユーザーの韓国トラクタの購入動機は、なんと言っても価格の安さである。が、同時に実際のユーザーの評価は本誌が想像していた以上に高かった。
馬力当たりの重量が重く、牽引力の大きさを感じるという声も多かった。水田向きに軽量化を最大の課題にしてきた日本のトラクタにしか乗ってこなかった人々にとっては印象的だったようだ。
また、電子部品の塊で、故障するとユニットごと交換せざるを得ず、素人には手の出せない修理が増える最近の機械と比べ、メンテナンスが容易であるという声も特徴的だった。韓国トラクタについて本誌も偏見を持っていたということだ。しかし、その偏見は捨てるべきだ。
それ以上に、こうした韓国トラクタを扱う業者が農機業界からするとアウトサイダーであり、従ってその情報が農家の目に触れるチャンスが少ないというのも、我が国の農業界の現状を示しているのだろう。しかし、グローバル化する農産物流通や国際間の農業競争が激しくなるにつれて、我が国でも韓国トラクタに対する関心が高まっていくのは確実であり、シェアを広げていくだろう。
本誌は「農業は食べる者のためにある」と言い続けてきた。そして、生産技術開発メーカーもまた、それを問われているということでもある。
しかし、農業経営者は価格だけでトラクタを評価するべきではない。
たとえば、先月号でも紹介した北海道栗山町で麦を30年以上にもわたって高収量のまま連作している勝部征也氏の例を考えればよい。
同氏は、農協などが補助金で作れば7~8億はかかることになってしまう、一回当り処理能力420tの乾燥調製施設を1億6千万円という破格の安さで建設した。麦乾燥に必要最小限の設備に装備を限定すると共に、海外から機械導入するなど厳しい建設コストを計算をした結果の価格なのだ。にもかかわらず、同氏は農業経営の基本とも言える圃場排水設備などの基盤整備には他に例を見ないような多くの費用を投じている(もっとも、補助金に頼らぬ自前の工事なので、通常の整備費用とは比較にならない低コストなのだが……)。
そればかりか、土に直接作用するトラクタに対する要求は厳しく、同農場のメイントラクタとしては、キャタピラー社のゴムクローラ・トラクタ、チャレンジャーを選んでいる。それも238馬力および275馬力を3台も所有しているのだ。それは、世界でも最高級のトラクタの一つに数えられるものだ。
また、千葉県のある稲作を中心とする経営者は今年、ジョンディアのクローラを買うことにしているという。その価格は決して安いものではない。しかし、それを導入することにより可能になる技術があり、経営を創れるのだから、その人は購入を決めたのである。
言うまでもないことだと思うが、読者におかれてはこの二人の経営者の判断も同時に考えていただきたい。
ともかくも、韓国トラクタは確実に日本市場でもシェアを広げていくだろう。それは、経営者に多様な選択肢が与えられることなのであり、歓迎すべきであると本誌は考える。
馬力当たりの重量が重く、牽引力の大きさを感じるという声も多かった。水田向きに軽量化を最大の課題にしてきた日本のトラクタにしか乗ってこなかった人々にとっては印象的だったようだ。
また、電子部品の塊で、故障するとユニットごと交換せざるを得ず、素人には手の出せない修理が増える最近の機械と比べ、メンテナンスが容易であるという声も特徴的だった。韓国トラクタについて本誌も偏見を持っていたということだ。しかし、その偏見は捨てるべきだ。
それ以上に、こうした韓国トラクタを扱う業者が農機業界からするとアウトサイダーであり、従ってその情報が農家の目に触れるチャンスが少ないというのも、我が国の農業界の現状を示しているのだろう。しかし、グローバル化する農産物流通や国際間の農業競争が激しくなるにつれて、我が国でも韓国トラクタに対する関心が高まっていくのは確実であり、シェアを広げていくだろう。
本誌は「農業は食べる者のためにある」と言い続けてきた。そして、生産技術開発メーカーもまた、それを問われているということでもある。
しかし、農業経営者は価格だけでトラクタを評価するべきではない。
たとえば、先月号でも紹介した北海道栗山町で麦を30年以上にもわたって高収量のまま連作している勝部征也氏の例を考えればよい。
同氏は、農協などが補助金で作れば7~8億はかかることになってしまう、一回当り処理能力420tの乾燥調製施設を1億6千万円という破格の安さで建設した。麦乾燥に必要最小限の設備に装備を限定すると共に、海外から機械導入するなど厳しい建設コストを計算をした結果の価格なのだ。にもかかわらず、同氏は農業経営の基本とも言える圃場排水設備などの基盤整備には他に例を見ないような多くの費用を投じている(もっとも、補助金に頼らぬ自前の工事なので、通常の整備費用とは比較にならない低コストなのだが……)。
そればかりか、土に直接作用するトラクタに対する要求は厳しく、同農場のメイントラクタとしては、キャタピラー社のゴムクローラ・トラクタ、チャレンジャーを選んでいる。それも238馬力および275馬力を3台も所有しているのだ。それは、世界でも最高級のトラクタの一つに数えられるものだ。
また、千葉県のある稲作を中心とする経営者は今年、ジョンディアのクローラを買うことにしているという。その価格は決して安いものではない。しかし、それを導入することにより可能になる技術があり、経営を創れるのだから、その人は購入を決めたのである。
言うまでもないことだと思うが、読者におかれてはこの二人の経営者の判断も同時に考えていただきたい。
ともかくも、韓国トラクタは確実に日本市場でもシェアを広げていくだろう。それは、経営者に多様な選択肢が与えられることなのであり、歓迎すべきであると本誌は考える。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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