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【田牧一郎のカリフォルニア稲作便り】
来年の計画のために今年の反省を、今年の反省のために調査・分析・データの蓄積を
- コメ産業コンサルタント 田牧一郎
- 第5回 1996年12月01日
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苗立ち数の減少
さて反収が上がらなかった原因ですが、一つには播種時期の降雨による副作用とも言える現象が影響したことです。
水田に10~15cmの水を溜めてから播かれた種は、水の中で発芽・発根と生育して行きますが、生育時の水の深さによって最終的な苗立ち数が決定されます。
種の水中に潜っていることのできる期間は限られており、本葉の展開が始まる頃には水上に出ていることが生育を良くする条件になります。
そのためには播種後一週間程度で落水し、苗立ちを良くしてから再度水を入れる方法が多くとられるようになってきました。
この時期、本来であれば播種前に入れられた水は播種後徐々に減少し、一週間程度は水の移動を止めて水温を確保し、苗の成長を助けることになっています。しかし今年はこの時期に50mmを超える雨が降り、そのまま水位が上昇してしまい、発芽はしても水の中で腐ってしまったものが多く発生してしまいました。
単純に水位を下げれば良かったわけですが、初期の水田に使用する除草剤は約3週間排水することが禁止されており、我々は除草剤の効果を最大限にするために水を深めに溜め、補給のための水の移動を最小限にするようにしています。これが今年は結果を悪くしてしまいました。
苗立ち数の少ないことが予想外に収穫量を減らした原因の一つです。
雑草による被害
苗立ちの良くない水田は浅水と中干しを繰り返すことになります。残っている稲を助け、分けつを増やし茎数を確保すべく努力するのですが、同時に雑草の発生も盛んになります。
通常は後期除早剤を散布して防ぐのですが、この使用にも今年は変化があり、事実、有効なものが使えない事態になりました。雑草に水田を占拠された状態になったものもあります。
この後期除草剤が使えない事態といいますのは、以前から果樹園の近くでは木の葉を枯らしてしまう除草剤が使えなかったのですが、今年は綿花の作付け面積が増加し、綿花に悪影響を及ぼすため、一部の除早剤が使用できなくなりました。
除草剤の選択の幅がどんどん狭くなり、結果として高価な除早剤の使用を余儀なくされ、しかも量的・時期的な制約から、散布しても期待したような効果が得られない結果が見られました。
雑草のはびこった水田での稲は、栄養不足や雑草が覆いかぶさることによる倒伏など、何も良いことはありません。
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田牧一郎 タマキイチロウ
コメ産業コンサルタント
1952年福島県生まれ。74年、米カリフォルニア州の国府田農場で1年間実習後、帰国、大規模稲作経営に取り組む。89年、カリフォルニアに渡米、コメ作りを開始する。同時に始めた精米会社で「田牧米」を作り、米国内にとどまらず世界中の良質米市場にブランドを定着させた。現在は、コメを生産しながら、コメ産業コンサルタントとして活躍する。
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