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女の視点で見る農業経営

“仕事”と“結婚”、私たちはそれが一致したけれど・・・


  けれど、小松家は野菜農家だから、思い切って作付けを減らすこともできる。無理をして例年の収量を確保するより、作付けを減らして、家族だけでこの年を凌ごう。それがこの年の小松家の総意だった。

 それまで真知子さんは、毎日畑に出る「表方」を担当していたが、出産を期に「裏方」のすみ子さんと交代。家事、育児全般を担当するようになっていた。


新しい力と夢を育んで


 そんな慌ただしさの中、博文さんは今年、「JA長野県青年部協議会」の会長を務めるようになった。11月にはローマで開かれた、国連食糧農業機関(FAO)の世界食糧サミットにも参加している。

 「うちのダンナは自分だけでなく、みんなで成長していきたいタイプ。産地に育てられてきたから今度は恩返しがしたいと。今農協も厳しいし、なんとかしないといけない。やっぱり。長にと名のつく限り、ちゃんとやらないと」

 そんなわけで、博文さんが家を空けることも多くなった。

 そんな小松家に新しいメンバーが加わったのは平成8年5月。新規就農を目指す、真下良二さん(31歳)だ。それまで北海道の借地でジャガイモ、カボチャなどを作っていたが、できればいずれは東京に住む両親から、あまり遠くない場所で農業を営みたいと考えていた。

 そこで、先に望月町で新規就農者として自立していた人を訪ね、相談を持ちかけたところ、博文さんを紹介してくれたのだ。

 ちょうど小松さんのところでも、「誰か専属で人を雇いたい」と考えていたところ。「渡りに舟」とはこのことで、真下さん一家は早速研修生として小松家へやってきたのだ。

「いきなり来いっていうダンナにもビックリだけど、真下さんも勇敢だよね。妻子があるのに北海道からパッと来るんなんて」

 現在は、町営住宅から、小松さんの畑に通っている。新たなパワーが加わった上に、7月からは育児休業明けの真知子さんも「裏方」から「表方」に職場復帰を果たした。

 ハクサイ2・7ha、キャベツ2・4ha、レタス類1・8ha。出産でダウンしていた収量も元通り。さらに新たな試みとしてO・9haニンジンの作付けも加わった。これは新たな冬場直前の現金収入と、アブラナ科連作障害対策にもなる。

 小松家における「真下効果」は、目に見えないところにも及んでいる。「若くてやる気もある。経済的に決して楽ではないけれど、彼にいてほしいと思います。それこそ私かダウンすれば大打撃を受けるような家族労働には限界がある。彼のような新しい人間の力がなければ、これからの農業は発展性がない」

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