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繰延税金資産の説明はちょいとややこしい。わかりやすく言えば、前払い税金のことである。この場合、将来(繰越欠損金の控除可能期限内で最大5年の間)利益が出せることを前提に翌年以降の税金を前払いしたことにして、将来戻るであろう還付税金を資産として計上したのである。もし利益が出せなければ還付分を決算上損失処理しなければならないのだ。本来、繰越税金を計上するのは、税務と会計を調整する目的であるのだが、全農の決算の目的は配当財源を捻出するためのようだ。
農協の終わりの始まり そして次のプレーヤーへ
そして平成15年度決算だ。
決算資料を分析する限り、経営状態が改善しているとは思えない。依然、足ケンケンをして水面に顔を出している状況には変わりがない。水位がちょっとでも上がると水面下に隠れてしまう。あるいはケンケンをする体力がなくなるかもしれない。
米価の暴落や原油高で、全農の経営が極度に悪化する懸念材料には事欠かない。農家が窮すれば、農協に累を及ぼし、それが最後には全農に直結する図式となる。
米価暴落で沈滞ムードの東北からコメ生産者のK君がこんなレポートを届けてくれた。
「農家は、大規模な生産者ほど経営が苦しくなり、肥料代などの支払いを後回しにしても生活ができなくなり、最悪の場合、生活費は共済の解約でひねり出すしかなさそうですよ。何かシステムが瓦解するような怖い気がしてきます」
それにはこう答えておいた。
「いよいよ『終わり』の『始まり』が始まるのです。政府は、農家も農協も助けることはできません。助けてやるカネがないんです。また助けない方がいいんです。経営能力のない生産者はマーケットから撤退するしかないんです。能力のある生産者に、カネもヒトもモノも集中することです。それをやらないとニッポン農業は、農協組織といっしょに沈没しかねません」
ニッポン農業にまだ脈があるとしたら、次のプレーヤーが増えてきていることだ。プロ野球界でいえば、落ち目の老舗球団に代わり、球団経営に名乗りを上げてきたライブドア、楽天、シダックスのような新興勢力だ。どうしたら球場にファンを呼び戻し、プロ野球を魅力あるものにできるか、これら新興勢力組に頼るしかないのである。
農業とて同じことだ。負け組のマーケットからの撤退を促し、新たな新興勢力に大胆に参入してもらうことしか、ニッポン農業を再建することは不可能なようである。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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