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【土門「辛」聞】
農家・非農家・株式会社の区別は必要ない
- 土門剛
- 第4回 2004年09月01日
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農業構造改革の大目標は、食料自給率の向上であり、そのためにわが政府が打つべき手は、農業分野でのオールカマー、すなわち誰でも農業経営にエントリーでき、誰でも思う存分にもうけられるような環境を整えてやることしかない。
かつて鄧小平が掲げた「黒猫でも白猫でもネズミを獲る猫はよい猫だ」の考えこそ、今のニッポン農業に必要なのである。
「食料・農業・農村基本計画の見直し」(略称・見直し)で焦点となっている施策の集中や、品目横断的助成制度の導入などは、そのオールカマーが実現できて後に、施策の集中なりが「ネズミを獲るよい猫」だけを対象にしてこそ、農政は国民から合格点がもらえるのである。「ネズミも獲れない猫」の農家にカネ(補助金)をタレ流すのは論外である。
ニッポン農業のオールカマー状況をごく簡単に点検してみよう。農政の知恵袋の官房のSさんにチェックをかけてみると「農地は非農家でも取得できるんですよ。みなさん参入障壁があるとおっしゃっておられますが、農業生産法人の要件をお読みいただければ、すぐに納得してもらえますよ」という答えが戻ってきた。
Sさんがきちんと説明してくれたのは、(1)取得者(またはその世帯員)が取得農地すべてを耕作する(間違いなく農業経営を行う)、(2)取得者(またはその世帯員)が必要な農作業に常時従事する、(3)取得後の農地面積が50a以上である(市町村によっては50a以下もあり)、(4)取得者(または世帯員)が、取得農地を効率的に利用する、という要件なのである。なーんだ、ニッポン農業は最初からオールカマーになっているではないかと目から鱗の説明だった。
しかし、「それでホントに自由なんですか」と聞いたら、Sさんは「ただ株式会社にはやや制限的です。特例以外では株式会社が農地を取得することは認められていません。現時点では特区制度で認められたリースなどによる賃借だけです」と説明してこられた。
株式会社だけが農地取得でまだまだ足踏み状態にあることには、農地法以外に別の要因がありそうだ。
Sさんも、株式会社の農地所有に反対のスタンスだ。
「株式会社は利益を追求しますが、もうからないとなればすぐに事業をやめてしまったり、産業廃棄物の捨て場にしたりお行儀が悪いですよね」
これには少々驚きだった。農政の知恵袋と尊敬してきたSさんまでもが、一昔前の「企業性悪論」みたいなことをおっしゃることに、である。それでは既存の農家が、農地を荒らしていないかと聞きたかったが、やめておいた。こんな話で意見をぶつけ合っても「神学論争」になるだけと思ったからだ。
かつて鄧小平が掲げた「黒猫でも白猫でもネズミを獲る猫はよい猫だ」の考えこそ、今のニッポン農業に必要なのである。
「食料・農業・農村基本計画の見直し」(略称・見直し)で焦点となっている施策の集中や、品目横断的助成制度の導入などは、そのオールカマーが実現できて後に、施策の集中なりが「ネズミを獲るよい猫」だけを対象にしてこそ、農政は国民から合格点がもらえるのである。「ネズミも獲れない猫」の農家にカネ(補助金)をタレ流すのは論外である。
目から鱗のオールカマー度 ただし株式会社には色眼鏡
ニッポン農業のオールカマー状況をごく簡単に点検してみよう。農政の知恵袋の官房のSさんにチェックをかけてみると「農地は非農家でも取得できるんですよ。みなさん参入障壁があるとおっしゃっておられますが、農業生産法人の要件をお読みいただければ、すぐに納得してもらえますよ」という答えが戻ってきた。
Sさんがきちんと説明してくれたのは、(1)取得者(またはその世帯員)が取得農地すべてを耕作する(間違いなく農業経営を行う)、(2)取得者(またはその世帯員)が必要な農作業に常時従事する、(3)取得後の農地面積が50a以上である(市町村によっては50a以下もあり)、(4)取得者(または世帯員)が、取得農地を効率的に利用する、という要件なのである。なーんだ、ニッポン農業は最初からオールカマーになっているではないかと目から鱗の説明だった。
しかし、「それでホントに自由なんですか」と聞いたら、Sさんは「ただ株式会社にはやや制限的です。特例以外では株式会社が農地を取得することは認められていません。現時点では特区制度で認められたリースなどによる賃借だけです」と説明してこられた。
株式会社だけが農地取得でまだまだ足踏み状態にあることには、農地法以外に別の要因がありそうだ。
Sさんも、株式会社の農地所有に反対のスタンスだ。
「株式会社は利益を追求しますが、もうからないとなればすぐに事業をやめてしまったり、産業廃棄物の捨て場にしたりお行儀が悪いですよね」
これには少々驚きだった。農政の知恵袋と尊敬してきたSさんまでもが、一昔前の「企業性悪論」みたいなことをおっしゃることに、である。それでは既存の農家が、農地を荒らしていないかと聞きたかったが、やめておいた。こんな話で意見をぶつけ合っても「神学論争」になるだけと思ったからだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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