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中国側はこうした提案に納得はしたが、やはり不満そうであった。しかし、土づくりは時間がかかるものであり、功をあせってはならないとした。改良心土耕プラウはあまり大きなけん引抵抗ではないので、高能率作業ができる。三年に一度位の割合で施用すれば、第二層に作土の一部が少しずつ入り込み、第二層の物理性、化学性が改善され、やがて微生物性をも良好にし、厚い層の作土の造成となって高位収量をもたらすものである。この場合は時間を味方にしなければならないと説得した。
長い間続いた腐敗政治の王政を覆そうとして人民が決起したとする。短期に事を為そうとすれば、革命であり、多くの血を流さなければならない。血を流すことができない、あるいは、好ましくないとするなら時間を掛けるしかない。土づくりもこれと同じである。短期間で生産性の高い土壌にしようとすれば、有機物も、土壌改良資材も投入しなければならないのである。それが物理的に不可能であるとすれば、できる範囲の手当てをし、時間を掛けるより仕方がない。
実施地の八五三農場(村と全く同じ形態)の宗場長(村長に当たる)は、さすがに苦労人だけによく理解した。深耕が大切であるとしながらも、深耕によって下層上が作土に混合することは、著しく生産性を低下させるものであり、何度か経験していて、改良心土耕プラウの発想を是としたのである。
三江平原の広大な面積を考慮し、三連のリバーシブル改良心土耕プラウを設計し、これを現地に持ち込んだ。もちろん、これに15t級のクローラトラクタを付けたことは言うまでもない。広い面積での実験の結果、各作物共に15%程増収し、充分にその効用が認められた。
ここでも土壌は複雑であり、その扱いの難しさを痛感した。同じ圃場でも、上性が異なり、作土の一部を心土破砕した場所に一律に落とし込むことはできないのである。土壌相手であれば、一度で満足することのできないのは当然のことと考え、翌年はさらに三種類の心土摯を持ち込むなどして対策した。
さらに白漿土の改良は、究極は心土破砕と化学性の改善であると考え、手押しの施肥機を持ち込み、心土肥培耕の実験区を設定することにした。丁度、中国側が調査時の提案から、独自に実験区を設けていた。明らかに根の伸びが異なり、大きな生育差を示していた。提案は正しかったのである。
機械化を前提にした心土肥培耕の実験区も予想通りの好成績で、中国の関係会議に発表され評価された。根の下層への伸びが著しく、物理性の改善に化学性の改善が加わったことで、格段の生育差になったのである。この根の伸長は、下層土の生物耕を意味するものであるり、ノーマルな土層・土壌改良の決め手になる。
その後、八五三農場で改良心土耕の面積が増えたかと言えば、あまり増えた気配はない。どうやら日本式プラウは完全な反転・鋤込みであり、その反転性の良さが、中国の所有する砕土機では、砕上が充分に行えず支障があったのかも知れないと考えられたりする。鋼材の手当てもできず、溶接機もないところであるから、砕土機を改良して対応することなどは望めないところである。砕土機も供与すべきであったと反省する。
もっとも、供与したクローラトラクタのアワーメータを見ると、一年間に二千時間も動いている。土壌改良より大事な仕事があって、そちらで稼働していたのかも知れない。
長い間続いた腐敗政治の王政を覆そうとして人民が決起したとする。短期に事を為そうとすれば、革命であり、多くの血を流さなければならない。血を流すことができない、あるいは、好ましくないとするなら時間を掛けるしかない。土づくりもこれと同じである。短期間で生産性の高い土壌にしようとすれば、有機物も、土壌改良資材も投入しなければならないのである。それが物理的に不可能であるとすれば、できる範囲の手当てをし、時間を掛けるより仕方がない。
実施地の八五三農場(村と全く同じ形態)の宗場長(村長に当たる)は、さすがに苦労人だけによく理解した。深耕が大切であるとしながらも、深耕によって下層上が作土に混合することは、著しく生産性を低下させるものであり、何度か経験していて、改良心土耕プラウの発想を是としたのである。
三江平原の広大な面積を考慮し、三連のリバーシブル改良心土耕プラウを設計し、これを現地に持ち込んだ。もちろん、これに15t級のクローラトラクタを付けたことは言うまでもない。広い面積での実験の結果、各作物共に15%程増収し、充分にその効用が認められた。
ここでも土壌は複雑であり、その扱いの難しさを痛感した。同じ圃場でも、上性が異なり、作土の一部を心土破砕した場所に一律に落とし込むことはできないのである。土壌相手であれば、一度で満足することのできないのは当然のことと考え、翌年はさらに三種類の心土摯を持ち込むなどして対策した。
さらに白漿土の改良は、究極は心土破砕と化学性の改善であると考え、手押しの施肥機を持ち込み、心土肥培耕の実験区を設定することにした。丁度、中国側が調査時の提案から、独自に実験区を設けていた。明らかに根の伸びが異なり、大きな生育差を示していた。提案は正しかったのである。
機械化を前提にした心土肥培耕の実験区も予想通りの好成績で、中国の関係会議に発表され評価された。根の下層への伸びが著しく、物理性の改善に化学性の改善が加わったことで、格段の生育差になったのである。この根の伸長は、下層土の生物耕を意味するものであるり、ノーマルな土層・土壌改良の決め手になる。
その後、八五三農場で改良心土耕の面積が増えたかと言えば、あまり増えた気配はない。どうやら日本式プラウは完全な反転・鋤込みであり、その反転性の良さが、中国の所有する砕土機では、砕上が充分に行えず支障があったのかも知れないと考えられたりする。鋼材の手当てもできず、溶接機もないところであるから、砕土機を改良して対応することなどは望めないところである。砕土機も供与すべきであったと反省する。
もっとも、供与したクローラトラクタのアワーメータを見ると、一年間に二千時間も動いている。土壌改良より大事な仕事があって、そちらで稼働していたのかも知れない。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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