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土を労る研究者を待つ
この白漿土の改良の成果が、中国政府から表彰され、やれやれと思った時のことである。ある日、日本の新聞に「あれは失敗であり、日本から新しい技術を供与する」とあった。某大学の先生が現地調査の結果、第二層と第三層の1対1の混合は理論的に正しく、かつ施工は容易であり、その方が効果的である。その大学から下層混合プラウを供与しようというものである。
凄い先生が現れたものである。しかし、新聞で失敗と決めつけられたことには往生した。仮に失敗であったとしても、社会的な立場を考慮した礼儀があってもよいのではないかと考えられたが、偉い大学の先生には抗議すべくもない。
新聞に出ていた供与するというとの機械を見て驚いた。関係者に問い合わせてみると、その昔、心土反転客土耕を検討していた時の試作機なのである。若干の改良を加えたに過ぎない。心土反転客土耕は良質の第三層を浮上させ、作土に客土として利用しようとするものである。これで、第二層と第三層を1対1で混合させ、作土には一切触れさせることができるのであろうか。大学ならできるということらしい。
熱心な先生で、現地には私費で持ち込んだようである。さすがに現地の土壌は硬く、破損してあまり実験にはならなかったと報告があった。この経験が生き、翌年は改良機を持ち込んで大成功と次の新聞に出ていた。
たまには土壌条件がよかったと書いてあったが、土壌は千変万化、同じ場所でもよい条件が続くとは限らず、現地の土壌を知る限りにおいては、そうよい場所もない筈である。前年度の機械の破損もテスト時の条件が厳しかったと考えればよい。大成功としてよいのかどうか疑問に思えたことである。しかも、土壌の経年変化、作物の栽培成績が示されていない。まあ、何れ提示されるであろう。
記事の中でもう一つ気になることがあった。それは、次回は肥料散布機を搭載して供与すると書いてあった。第二層と第三層を1対1に混合することが理論的に正しく、実験でも正しいことが証明され、実地に成功したならそれで充分ある筈である。資材を使わなくとも40~50%増収するのだそうであり、経済的で、意義があるとするなら、肥料散布機は不要であると思える。
この変節はどういうことなのか。問いただす気もないが、大学の先生だから許されることなのだろうか。先に研究開発していた人達の業績を失敗と決めつけておいて、その人達が本質的なものと提案したことと同じことをしようというのは、どうにも理解に苦しむところである。
土層・土壌改良は土地の生産性を向上させることにおいて、これからますます重要になると思える。しかし、残念ながら、意外とこの関連の研究者が少ないのが現状である。土を大事に考え、土を労り、土の持つ能力を最大限に引き出そうとする本物の研究者の出現を待つばかりである。
この白漿土の改良の成果が、中国政府から表彰され、やれやれと思った時のことである。ある日、日本の新聞に「あれは失敗であり、日本から新しい技術を供与する」とあった。某大学の先生が現地調査の結果、第二層と第三層の1対1の混合は理論的に正しく、かつ施工は容易であり、その方が効果的である。その大学から下層混合プラウを供与しようというものである。
凄い先生が現れたものである。しかし、新聞で失敗と決めつけられたことには往生した。仮に失敗であったとしても、社会的な立場を考慮した礼儀があってもよいのではないかと考えられたが、偉い大学の先生には抗議すべくもない。
新聞に出ていた供与するというとの機械を見て驚いた。関係者に問い合わせてみると、その昔、心土反転客土耕を検討していた時の試作機なのである。若干の改良を加えたに過ぎない。心土反転客土耕は良質の第三層を浮上させ、作土に客土として利用しようとするものである。これで、第二層と第三層を1対1で混合させ、作土には一切触れさせることができるのであろうか。大学ならできるということらしい。
熱心な先生で、現地には私費で持ち込んだようである。さすがに現地の土壌は硬く、破損してあまり実験にはならなかったと報告があった。この経験が生き、翌年は改良機を持ち込んで大成功と次の新聞に出ていた。
たまには土壌条件がよかったと書いてあったが、土壌は千変万化、同じ場所でもよい条件が続くとは限らず、現地の土壌を知る限りにおいては、そうよい場所もない筈である。前年度の機械の破損もテスト時の条件が厳しかったと考えればよい。大成功としてよいのかどうか疑問に思えたことである。しかも、土壌の経年変化、作物の栽培成績が示されていない。まあ、何れ提示されるであろう。
記事の中でもう一つ気になることがあった。それは、次回は肥料散布機を搭載して供与すると書いてあった。第二層と第三層を1対1に混合することが理論的に正しく、実験でも正しいことが証明され、実地に成功したならそれで充分ある筈である。資材を使わなくとも40~50%増収するのだそうであり、経済的で、意義があるとするなら、肥料散布機は不要であると思える。
この変節はどういうことなのか。問いただす気もないが、大学の先生だから許されることなのだろうか。先に研究開発していた人達の業績を失敗と決めつけておいて、その人達が本質的なものと提案したことと同じことをしようというのは、どうにも理解に苦しむところである。
土層・土壌改良は土地の生産性を向上させることにおいて、これからますます重要になると思える。しかし、残念ながら、意外とこの関連の研究者が少ないのが現状である。土を大事に考え、土を労り、土の持つ能力を最大限に引き出そうとする本物の研究者の出現を待つばかりである。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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