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【今月の数字】
「米生産への集中が進む中で、今後、米の生産規模を拡大していく」と考える農業経営者の割合
- (株)結アソシエイト 代表取締役 松田恭子
- 第2回 2004年07月01日
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26.7%
(本誌読者アンケートから)
前号の続き。地域水田農業ビジョンの中で、現在稲作を中心としている農業経営者は今後の経営方針をどう考えているだろうか? 本誌アンケート調査結果では、「米の生産規模拡大」と答えたのは26.7%にとどまった。この回答者のほとんどは作付規模10ha以下だ。また、西日本の生産者が全くおらず、山形、新潟、石川などの東日本の生産者だったことも大きな特徴である。
山形、新潟、石川は、稲の作付面積が10ha以上の大規模農家は少ないが3~10haまでの中堅農家は隣接県に比べて多い。一方、本誌アンケート調査ではこれら3県で10haを超える農家からも回答を得ているが、生産規模拡大という回答はない。
これらを考えると、どうも、地域水田農業ビジョンで言うところの「担い手への土地利用の集積」に呼応するのは、3~10haの中堅農家ということになりそうだ。現在の10haを超える大規模農家が50、100haという規模拡大をためらう理由は何なのか?
1つは、前号でも取り上げた、地域レベルで未だに生産調整が存在するという縛りにあるが、もう1つ注目したい点がある。それは、規模拡大により収益性が低下するという点だ。農水省の統計データによると稲作の農業所得は作付規模とともに上がるが、4.0~5.0haと15ha以上のランクで大きく低下するのである。つまり、現在作付面積が10haを超える大規模農家は、収益性の低下の問題からそれ以上拡大を望まないのではないか、ということなのだ(データの制約があり十分な検討の結果ではないため、この点は今後さらに背景を追いたいと考えている。読者のご意見をお寄せいただきたい)。
いずれにせよ、稲作単一規模拡大が唯一の特効薬ではないことを農業経営者は知っている。米に関しては品質向上と販路の拡大という基本を守り、それ以外の作物は、補助金は低くとも自らの才覚で新規作物を選ぼうという方向がアンケートに出ている。
なお、米以外の新規作物に「取り組みたいがまだ具体的でない」と回答した人は、今後の課題として価格や販路を挙げたのに対し、「具体的な計画がある」と回答した人は農地の確保を挙げている点が目立った。「水田転作の補助金が麦、大豆に偏っているため、他の作物を作ろうとすると農地を借りられない」という声もある。農地の問題は、稲作でなく畑作で噴出している。
(松田恭子)
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松田恭子 マツダキョウコ
(株)結アソシエイト
代表取締役
日本能率協会総合研究所で公共系地域計画コンサルタントとして10年間勤務後、東京農業大学国際食糧情報学科助手を経て農業コンサルタントとして独立。実需者と生産者の連携の仕組みづくりや産地ブランド戦略を支援している。日本政策金融公庫農業経営上級アドバイザー試験合格者。(株)結アソシエイト代表取締役。
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