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【土門「辛」聞】
トレーサビリティは農薬だけではない
- 土門剛
- 第2回 2004年07月01日
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2000年7月、九州・沖縄サミット福岡蔵相会合のキッチンで起きていた食の安全にまつわるハプニングはあまり知られていない。
晩餐会の料理に使われる食材の一つが、いざ調理という前の“お毒味”で大腸菌が検出され、急遽メニューから外されてしまったのである。
その食材の名前を言ってしまえば産地名はすぐに分かってしまうので名前は控えさせてもらう。でも産地の名誉のために言っておくが、大腸菌が検出されたのは、食材そのものからではなく、保湿のため木製の箱の内部に敷き詰められた紙の部分からだった。そのことを知らされた産地の生産者は、よもや保湿のための紙から大腸菌が検出されるなんて想像もできなかったはず。大ショックを受けたのは言うまでもない。
このエピソードを紹介したのは、食の安全は、何も農産物や食品だけでなく、その包装容器にまでチェックが及ぶということをお伝えしたかったからだ。どうして保湿材に大腸菌がついてしまったか。その原因は何も明らかにされていない。
ただ容易に想像できるのは、その農産物を圃場から採取して包装容器に詰める段階で菌が付着したと考えられる。ひょっとして、トイレに近い不衛生なところで作業をやっていたか、作業に従事していた人がどこかで菌をつけてきて、それを移したかのいずれかではないかと想像される。
これは余談だが、晩餐会の総料理長に抜粋されたのは、わが国を代表するフレンチ(フランス料理)の鉄人シェフ、三國清三氏だった。北海道増毛町出身で、15歳で料理人を志し、札幌グランドホテル、東京・帝国ホテルを経て、弱冠20歳で在スイス日本大使館の料理長に就任した。在欧中に、天才料理人といわれるフレディ・ジラルデ氏らに師事して腕を磨き、帰国後の1985年には、東京・四谷に「オテル・ドゥ・ミクニ」を開店。現在はレストランなど10店を展開する、レストラン経営の“鉄人”でもある。
この“鉄人”のレストランでも食中毒事故が起きてしまった。結婚披露宴に出席した71人中31人と、ブライダルフェアメニューを食べた3人が下痢や吐き気などの症状を訴えたのだ。保健所の検査では、貝類に付いていたSRSV(小型球形ウイルス)が事故の原因とされた。サミットでは事前チェックで食中毒を防ぐことができたが、自分のレストランでは結果的にそれができなかった。食の安全とは、考えようによれば、大変な作業でもあるのだ。
晩餐会の料理に使われる食材の一つが、いざ調理という前の“お毒味”で大腸菌が検出され、急遽メニューから外されてしまったのである。
その食材の名前を言ってしまえば産地名はすぐに分かってしまうので名前は控えさせてもらう。でも産地の名誉のために言っておくが、大腸菌が検出されたのは、食材そのものからではなく、保湿のため木製の箱の内部に敷き詰められた紙の部分からだった。そのことを知らされた産地の生産者は、よもや保湿のための紙から大腸菌が検出されるなんて想像もできなかったはず。大ショックを受けたのは言うまでもない。
このエピソードを紹介したのは、食の安全は、何も農産物や食品だけでなく、その包装容器にまでチェックが及ぶということをお伝えしたかったからだ。どうして保湿材に大腸菌がついてしまったか。その原因は何も明らかにされていない。
ただ容易に想像できるのは、その農産物を圃場から採取して包装容器に詰める段階で菌が付着したと考えられる。ひょっとして、トイレに近い不衛生なところで作業をやっていたか、作業に従事していた人がどこかで菌をつけてきて、それを移したかのいずれかではないかと想像される。
これは余談だが、晩餐会の総料理長に抜粋されたのは、わが国を代表するフレンチ(フランス料理)の鉄人シェフ、三國清三氏だった。北海道増毛町出身で、15歳で料理人を志し、札幌グランドホテル、東京・帝国ホテルを経て、弱冠20歳で在スイス日本大使館の料理長に就任した。在欧中に、天才料理人といわれるフレディ・ジラルデ氏らに師事して腕を磨き、帰国後の1985年には、東京・四谷に「オテル・ドゥ・ミクニ」を開店。現在はレストランなど10店を展開する、レストラン経営の“鉄人”でもある。
この“鉄人”のレストランでも食中毒事故が起きてしまった。結婚披露宴に出席した71人中31人と、ブライダルフェアメニューを食べた3人が下痢や吐き気などの症状を訴えたのだ。保健所の検査では、貝類に付いていたSRSV(小型球形ウイルス)が事故の原因とされた。サミットでは事前チェックで食中毒を防ぐことができたが、自分のレストランでは結果的にそれができなかった。食の安全とは、考えようによれば、大変な作業でもあるのだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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