ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

どうなる!どうする?こんなとき

<拡大版>農基法改正の狙いは何か

8月の農政審報告に次いで、9月には新しい農業基本法策定に向けての「農業基本法に関する研究会」(農相の懇談会、荏開津典生座長)の最終報告案がまとめられました。農基法は、農業や農政の方向づけを示す憲法のような法律と呼ばれています。研究会は、新しい基本法を作るべく論点を整理したものです。報告をかいつまんで紹介すると、新しい基本法には、人口・食料・環境など「地球的な視点」を取り込んだ食料・農業・農村の位置付けに関する「国民合意の形成」が最重要だと指摘しています。
 Q:そもそもこの時期に新しい農基法を策定しなければならない意味はどこにあるのでしょうか。

 A:その前に、いまの農基法について若干の説明が必要なのではないでしょうか。現行農基法は、高度成長期の初めの1961年(昭和36年)に作られました。その柱は、農業生産性の向上に主眼を置いたもので、それによって農業者と工場労働者の収入格差を埋めようとすることを基本路線としていました。そのための具体策として、農業構造の改善、総合的価格政策、農業生産の選択拡大を掲げています。

 Q:もつと分かりやすく説明してくれませんか。

 A:農業構造の改善とは、「農業経営の近代化」のことで、農家を自立的経営ないし企業経営的に誘導することでした。いわば農業を産業として位置づけ、競争力をつけるための環境整備を図ることが農基法の大目標でした。具体的には、経営の規模を拡大し、畜産物や果実、野菜など需要の伸びる分野に選択的拡大をばかり、他産業と生産性や所得に差のない自立経営を目指す農家を育成しようとしたのです。しかしながら現実は農基法とは逆の結果になってしまった。

 Q:どうしてですか。

 A:確かに農業と工業との間の所得格差は解消しましたが、それは農基法が目指した農業の生産性向上ということではなく、兼業収入が飛躍的に拡大したからなんですね。農基法は、日本経済が高度成長を目指してテイク・オフした時につくられた法律でした。口悪い向きは、農基法で一番メリットを受けたのは大企業ではないかといわれています。

 Q:どこかで聞いたような話ですね。

 A:農基法がつくられた時代は、高度成長経済の展開になれば、やがて深刻な人手不足が到来すると予測されていました。そこで農村にいた次男や三男を都会の工場労働者として送り出す時代の要請があったのです。農業は長男にまかせればよい。その長男が農業を生計を立てるには、狭い農地でもある程度の収入が得られる野菜や果樹、畜産などに展開すべきであると方向を示しだのが、現行農基法だったのです。選択的拡大はある程度進んだが、米などはいろいろと問題が起きています。

 Q:それで現行農基法のどこが問題でしたか。

 A:それは農地に対して抜本的な対策を講じなかったからでしょう。高度成長で農地の価格が高騰し、その結果として農家は農地を資産として考えるようになり、農地流動化が大きく妨げられるようになったからです。とくに規模が勝負の米などは問題だらけになってしまったのでした。

 Q:それで新しい農業基本法はどういう方向を目指しているのでしょうか。

 A:研究会は、新しい基本法制定に関連して8つのポイント(表を参考)を指摘しています。それをざっと整理すれば、次の2点に集約できます。一つは、農業・農村に対して食糧供給以外に国土や自然環境保全などへの国民の期待が高まっていること、もう一つは、国際社会の中の農産物貿易と日本農業のあり方の論議が必要ということでしょうか。

関連記事

powered by weblio