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質問 畑作や米農家なら誰でももらえるんですか。
土門 そうは問屋は下ろさないよ。山下さんは農水省の意向をこう代弁している。
当初5年間、都府県3ha、北海道10ha以上の規模農家とし、規模拡大を考慮し、次期5年間、都府県5ha、北海道15ha以上の規模農家とする。ただし、現在の規模は小さいが規模拡大の意欲、客観的条件が備わっている者、新規就農者については暫定的に対象とする。不可抗力による場合を除き、上記の規模を維持できなかった者、暫定的な対象者のうち一定期間内に上記の規模に達しなかった者については、直接支払いの返還を求める。
質問 それじゃ一定規模以下の農家はどうなるんですか。
土門 それはグッドポイントだ。実は所得補償の対象外なんだ。少なくとも政府案ではね。
質問 ひと騒動が起きますよ。
土門 例えば都府県で3ha以上なら、一つの農協で直接支払いの対象になるのは一握りの農家だろうね。大半は1ha以下の零細規模農家で対象外となる。
質問 農協は黙っていませんね。
土門 農水キャリアの本心は、こんな数字で農協組織は許してくれないだろうと思っているよ。3haや10haの数字はかなり高めにぶち上げた感じは否めない。どうせバナナのたたき売りではないが対象となる面積の数字が落ちてくるはずだ。
質問 落とし所の数字は。
土門 さあ難しい質問だ。農協組織からすれば30a農家にも補償せよと言い出してくるに違いない。足して二で割れば、都府県なら1.5ha程度が落とし所かな。かなり無責任な予想だけどね。これでも農協組織はきついと思うよ。
国際価格とプロ農家
質問 そんなに厳しくするのはどうしてですか。
土門 コメで考えてみよう。山下氏の論文によれば、WTO農業交渉の結果として想定される上限関税率を100%と想定している。すなわち国際価格の2倍の水準だ。いまは4倍近い。これからも農業改革をドンドン進めて国際価格に近づけるよう下げていかなければならないんだ。そのためには構造改革効果を持つ直接支払いが必要となるというわけでもあるんだ。
質問 それがどうして構造改革になるのですか。
土門 コメの価格が下がると、零細副業農家は農地を手放すが、受け手の主業農家の地代支払い能力も低下するため、農地は耕作放棄されてしまう。一定規模以上の主業農家に農地面積に応じたEU型の直接支払いを交付し、地代支払い能力を補強してやれば、農地はこれら農家へ集積する。この直接支払いは、地代費用を軽減するというそれ自体の直接的なコストダウン効果と、農地の集積による規模拡大・生産性の向上を通じた間接的なコストダウン効果(これにより財政負担は節約できる)を発揮する。山下氏の論文にはこう書いてある。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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