ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

江刺の稲

農業界に新しい神話を作る人々

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第125回 2006年07月01日

  • この記事をPDFで読む
    • 無料会員
    • ゴールド
    • 雑誌購読
    • プラチナ
 主人公の家族の当主が経営する鈴木オートは間口数間の店。どうみても「自動車整備工場」ではなく「自動車整備店」であるところが昭和30年代なのだ。その「社長」の台詞。金の卵とも呼ばれた集団就職で上京し、住み込みで働く少女に、

「自動車産業はこれからの時代の花形産業なのだ」というようなことを熱を込めて語る。

 現実には、その後の日本社会にはエネルギー転換に伴う大労働争議や公害事件、あるいは国論を二分した政治的混乱があった。でも、彼の台詞に、今よりずっと貧しくとも困難の中で成長を信じていた当時の市井の人々の気分が示されていた。

 その場面を見ながら筆者は、あの鈴木オートの社長のごとく熱く未来を語れる人々が、今という時代であればこそ、農業の世界にいることを思い起こしていた。それは未来を信じる経営者本人だけでなく、あえてそこに職場を求める人々たちのことである。

 本誌では、5月号から農場に働く人々のリレー訪問対談を始めている。あたりまえの現代の職業人として、法人個人を問わぬ農業経営者の下に働き場所を求めようとする人々。彼らの存在は日本の農業にとっての金の卵というべき存在だ。

関連記事

powered by weblio