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【読み切り】
食糧庁総務部長自殺の内幕
- 土門剛
- 1997年02月01日
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昨年、11月30日のことである。筆者が、12、3年も前からの顔馴染みである食糧庁総務部長だった紀内祥伯氏が、中央線の特急列車に飛び込み自殺した。彼のプロフィールについて簡単に触れておこう。長崎県大村市出身。東大法学部から1968年に農水省に入った。秘書課長、経済局審議官などを経て95年11月から食糧庁総務部長の職にあった。紀内氏は、90年には食糧庁企画課長に就いている。省内ではコメ行政の第一人者と呼ばれていた。総務部長についたのも、新食糧法になって実質的には初めての米価交渉を担当するためだった。農水省は、コメ行政のエースを投入してきたのだ。
紀内氏の自殺は、その米価交渉から2日後のことである。結果は、新聞で報じられた通りである。97年産の政府買い入れ価格は、前年産より1・1%の価格引き下げとしたものの、ポイントとなった減反では農業団体の要求が通った。後で詳しく説明するが、減反面積を前年産並みの78万haに据え置くことに成功。政府が示した83万haへの面積拡大は軽く一蹴されたのだ。農業団体の大勝利だった。
自殺の原因は、今もって分からない。この悲しい事件の直後に、マスコミを通じて流れてくる農水幹部のコメントは、どれも紀内氏の死を悼むというようなニュアンスには受けとれなかった。藤本孝雄農水相は紀内氏が自殺して2日後に行われた会見の席で紀内氏の自殺と職務とは何の関係もないと公言しているのだ。自殺直後に仕事と関係がないとどうして公言できるのだろうか。筆者はこのコメントを聞いてア然としたものである。
1月8日の人事で退官した上野博史農水次官も、「(28日の)軽い打ち上げのときもいつもの朗らかな彼だった。なぜこういうことになったのかわからない」(週刊アエラ誌)と、自分の部下が自殺に追い込まれたというのに、農水幹部が悲しみに包まれているというニュアンスが何も伝わってこないのである。
筆者は、紀内氏のことをよく知っていた。なにしろ氏が、故山村新次郎農相の秘書官をしていた時からの付き合いであった。紀内氏が、仕事上、悩んで死を選ぶような人間でないことは、長い付き合いで十分に分かっていた。農水幹部が、突き放したようなコメントを公表するのは、これは裏に何かあるなと思いめぐらせたものである。
紀内氏の自殺は、その米価交渉から2日後のことである。結果は、新聞で報じられた通りである。97年産の政府買い入れ価格は、前年産より1・1%の価格引き下げとしたものの、ポイントとなった減反では農業団体の要求が通った。後で詳しく説明するが、減反面積を前年産並みの78万haに据え置くことに成功。政府が示した83万haへの面積拡大は軽く一蹴されたのだ。農業団体の大勝利だった。
自殺の原因は、今もって分からない。この悲しい事件の直後に、マスコミを通じて流れてくる農水幹部のコメントは、どれも紀内氏の死を悼むというようなニュアンスには受けとれなかった。藤本孝雄農水相は紀内氏が自殺して2日後に行われた会見の席で紀内氏の自殺と職務とは何の関係もないと公言しているのだ。自殺直後に仕事と関係がないとどうして公言できるのだろうか。筆者はこのコメントを聞いてア然としたものである。
1月8日の人事で退官した上野博史農水次官も、「(28日の)軽い打ち上げのときもいつもの朗らかな彼だった。なぜこういうことになったのかわからない」(週刊アエラ誌)と、自分の部下が自殺に追い込まれたというのに、農水幹部が悲しみに包まれているというニュアンスが何も伝わってこないのである。
筆者は、紀内氏のことをよく知っていた。なにしろ氏が、故山村新次郎農相の秘書官をしていた時からの付き合いであった。紀内氏が、仕事上、悩んで死を選ぶような人間でないことは、長い付き合いで十分に分かっていた。農水幹部が、突き放したようなコメントを公表するのは、これは裏に何かあるなと思いめぐらせたものである。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
食糧庁総務部長自殺の内幕
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