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江刺の稲

父の姿が格好良かったから農業を目指した

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第138回 2007年09月01日

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 そんな大城さんが今、一番心がけていることは人材の育成だ。しかし、県外から来た若者に土地取得の相談に乗ってあげようとしても思い通りにいかない沖縄人の精神風土もある。耕作放棄状態の農地があっても、島内の人間である大城さんですら、よそ者としてなかなか規模拡大の土地取得ができないのだ。彼らを挫けさせないためにも、大城氏は父が示してくれた生き様を若者たちにも見せようとしているようだ。

 ところで、農業関係者たちが「農業に後継者が少ないのは儲からないからだ」と、ことさらのように言うのを僕は嘘だと思う。あえて言えば、その親が子供たちに職業を通して誇りある姿を見せていないからだ。

 年に一作か二作という資本の回転の少ない農業は他の職業と比べて儲からないのは事実かもしれない。しかし、稲作でも酪農、畜産、あるいは果樹や野菜などの園芸部門でも、しかるべき利益を出している人は必ずいる。

 親にない誇りなど受け継ぎようもないが、誇りある親の姿を見て育った子供であれば、農業を継がずとも誇りある職業人になっていくものだ。それどころか、仮に経済的には困難を極めていても、一心に何かを求め続ける親は、その姿で次世代を育てている。

 そもそも、今時、農家だから農業を継ぐ必要などないのだ。好きであればこそ選択であるべきだ。真に受け継ぐべきものがあるとすれば、それは親の誇りなのである。

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