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特集

GAPで実現!顧客から信頼される農場管理

農業経営者のなかで生産者が最も不得手とするのがお客とのコミュニケーションだ。顧客が最低限期待する農作物の安全性についてさえ、的確に説明する術を持っていない。振り返ってみると、食の不安が高まるたびに、信頼の証として有機JASや特別栽培農産物がもてはやされ、農薬使用履歴の記帳運動が叫ばれてきた。しかし、よく考えてみると本当にそれで安全性を“確保”したといえるのか。そこでGAP(ギャップ、Good Agricultural Practice=良い農業のやり方)の登場である。作る人、売る人、買う人の誰もが信頼できる農場管理の基準として、すでに世界70カ国で採用されている。でもGAPって何?この際、あれこれ考えるより、この特集をよく読んで世界が認める基準を自分の農場で実現してしまおう。(取材、構成/浅川芳裕、青山浩子、松田恭子)
GAPってなんだ?

 農業経営者の仕事に対して、消費者や流通業者が最低限期待する役割とは何か? 答えは “農場のリスク管理” である。リスク管理といっても、何も難しい話ではない。「何も心配せずに口にできる農産物を食べたいという顧客の当たり前の欲求」に応えられる生産を実践できているかどうかの問題だ。

【全国の農場で使える管理基準】

 「自分の農場は実践できている」と個々の農家がバラバラの基準でお客に安全性を説明しても理解は得られない。全国の農場で共通して適用できる農業生産の管理手法が必要になる。そこで生まれたのがGAPという考え方だ。

 GAPは、Good Agricultural Practice の頭文字をとったもので、直訳すると「いい農業のやり方」となる。一般に “適正農業規範 ” と訳されている。農産物生産の各段階で食品危害を最小化するために、生産者が守るべき管理基準のことだ。

 その中身は、農産物の安全の確保だけではない。作る人・売る人・食べる人の共通利害である “持続可能な農業生産” を目指し、「環境への配慮」や「働く人の安全と福祉」の視点からも、適切な農場管理とは何かを定義している。GAPの目的を経営者の立場から要約すると、農業のトータルな危機管理術と言えるだろう。

 このようなGAPの考え方は、E Uで最も普及している。ユーレップ(欧州小売協会)GAPと呼ばれる民間主導の基準で、いまや量販店などに出荷する農産物についてはGA P認証が生産農場の必須要件となっている。その結果、EU内の生産者だけでなくEUへ輸出する世界中の生産者が認証を取得しており、ユーレップGAPは事実上GAPの世界標準となっている。

【世界に通じる日本版GAP】

 日本でもGAP導入の動きが活発化している。なかでも、農業経営者が自発的に組織した日本GAP協会は、ユーレップGAPと同等の基準を作り、世界に通じる日本版GAP (=JGAP)の実践方法の確立と普及を目指している。詳しくは 21 ページからの「JGAP取得の手順とノウハウ」をご覧いただきたい。

 JGAPといっても何か特別なことを始めるわけではない。管理の行き届いた生産者にとって、「当たり前のことをキチンとやる」ことに過ぎない。肝心なのはむしろ、JGAP は近い将来、流通業者や消費者から信頼されるための全国共通の証明書になる可能性が高いということだ。

 理由は簡単だ。流通商品として農産物を生産するのであれば、食品の安全性の証明手段がこれから必須条件になる。それを誰にも理解できる形で証明できるリスク管理基準を持っているのは、日本では今のところ、 JGAPしかないからだ。

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