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座談会

GAPは農業が産業になるための必要条件

昆吉則(以下、昆)4月27、28日に東京で開催されたGAP全国会議には両日で800名以上が参加するほどの盛況で関心の高さをうかがわせます。
座談会GAPは農業が産業になるための必要条件!日本版GAPの先導者が語る

聞き手/本誌編集長昆吉則・まとめ/青山浩子

昆吉則(以下、昆)4月27、28日に東京で開催されたGAP全国会議には両日で800名以上が参加するほどの盛況で関心の高さをうかがわせます。木内さんは、青森県の片山りんごさんと同じ時期に、日本でいち早くユーレップGAPを取得されましたが、きっかけをお聞かせください。

木内博一和 郷園の設立後まもなく発生した残留農薬事故(詳細は19ページ)がきっかけとなって、どんな農薬をどう使用したかという記録をつけるようになりました。現在、契約栽培をおこなっている農産物の記録は100%トレースできるようになっています。

 しかし、この仕組みを運用し続けるうちに2つのことに気づきました。多くの生産者が土づくりをしたり、使った資材の記録をとったりしています。また「自分の作ったものが一番おいしい」とも言います。おそらく、土づくりや記帳を差別化の手段として考えているのだと思います。でも本来、作物にとってどれだけいいのかというバロメータがない限り、消費者は判断ができないと思うのです。例えば、「本当に高い価格で買うべきものなのか」、あるいは「高く買うだけのことを生産者がやってくれているのか」という物差しです。これからの農業にはそういった標準的な基準が必要ではないかと思うようになりました。

 もうひとつは、取引先も生産者に対しいろいろな要求を出してきますが、要求する内容の8~9割は同じなのに、記入する様式がそれぞれ異なっています。流通業者として統一したフォーマットを作るべきではないか提案してきましたが、流通業者も産地も考え方がバラバラでまとまらなかった。結果的に、日本全体の標準規格が作れられてこなかったのが問題です。

 そうした折、GAPのことを知りました。ヨーロッパはEU統合と拡大で、国境を越えた取引が増えている。商圏が巨大化するなかで標準規格となるGAPができたという話を田上さんから聞くうちに「アジアもやがてヨーロッパのようになる。そうであれば日本が先行して標準規格を作るべきではないか」と思うようになったのです。そのためにはまず自分たちでやってみようとGAPを取得することにしました。

 私は、農家には2つのタイプがあると思っています。1つは「農的暮らしをする人」。もうひとつは「生産事業としての農業をする人」。後者にとっては農産物=換金作物なのですから、製造工程に関わる管理手法は絶対に必要です。また、手法を構築することでマーケットの信頼を得ることができます。GAPを取得した農産物の付加価値がアップするものではないと思いますが、生産事業としての農業をやろうという人にとっては最低条件です。GAPをとらなければ生産事業としての農業の土俵に立てないと思ったほうがいいのではないかと思います。

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