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旅の曲者

秋の夜、月を見上げて

秋は、月が美しく見える季節だ。冴え冴えとした夜の大気の中に浮かび上がる月は、ほかの季節よりもその輝きと大きさを一層増しているかのように見える。
 秋は、月が美しく見える季節だ。冴え冴えとした夜の大気の中に浮かび上がる月は、ほかの季節よりもその輝きと大きさを一層増しているかのように見える。

 初めて、サハラ砂漠で満月を見たとき、その存在感に驚嘆した。月の光で満たされた空には星明かりは消え、真昼のような明るさが滑らかに波打つ砂漠を青白く満たしていた。月が、これほど明るい天体だったことに衝撃を受けた。

 なにより、圧倒されたのはその大きさだった。地球のどこから見上げようと、月の大きさに変わりはないはずだとはわかるのだが、それでもこの大きさは尋常ではない。それが証拠に、普段は見えない月の表面の模様だってはっきり見えるのだ。

 僕は鮮烈なその印象をとどめておこうと、スケッチブックを取り出し、砂漠のオアシスに昇る満月の風景をスケッチした。帰ってからスケッチを完成させるため、35ミリレンズを付けた一眼レフのカメラで、風景をパチリと撮影しておいた。

 帰国後、楽しみに待っていた写真ができあがった。ところが、砂漠の月を撮影した例の写真を見て、唖然とした。月はどこへ行ってしまったのか。わざわざ、少し大きめに引き延ばしたというのに、砂漠の夜をあれほど幻想的に染め上げていた、あの大きな月が見あたらない。そのかわりに画面の上の方に、米粒のような光のシミが申し訳なさそうに貼りついている。これが、あの月なのか。なんで、こんなに縮んでしまったのか。

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