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【耕すということ】
土層・土壌改良雑感(3)
- 農学博士 村井信仁
- 第21回 1997年02月01日
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大量の土壌改良資材を取扱うために
北海道の土壌の多くは、下層土が酸性で、かつ、燐酸に不足している。石灰と燐酸を耕起と同時に下層に混合するのが心土肥培耕プラウである。型を整え、事業化の段階に入って次の課題が生じてきた。それはそういった土壌改良資材の大量の取扱いである。
炭カルは30kgの小袋入り、熔性燐肥は20kgとしても、事業ともなれば、一日にかなりの量を扱うことになる。心土肥培耕プラウのタンクに投入する方法を合理化しなければ、事業として成立しないとされた。また、予め混合する方法も考えなければならない。
そこで設計されたのが、混合装置付きローデングコンベヤである。移動が容易なように大きなタイヤ付きとした。下方のタンクに炭カルと熔燐の袋を口を開けて投入すると、ベルトコンベヤで運ばれ、混合されて、心土肥培耕プラウのタンクに投入される仕組みである。
この場合も、土壌肥料の関係者からは完全に均等に混合されるものでなければならないとクレームが付いた。ところが、これがなかなか難しい。完全に混合しながら投入しようとすると時間が掛かる。時間が掛かっては作業能率が低下する、との現場からの厳しい注文である。混合しておいて一気に投入するようにしようとすれば、大型の混合機を必要とし、その経費負担が問題になるなどである。
現在のように油圧機器が自在に使える時代では、動力伝達が容易であり、回転数も任意に選択でき、特に混合機などの設計に難しさを伴わないが、昭和四十二年当時は、かなり油圧機器が使える時代になっていたとはいえ、型式も限られ、しかも高価であった。さて、どうするかである。
育苗用の床土調製機を参考にし、油圧機器は使わず、エンジンとミッションを搭載するだけのものとした。タンクは二つで、フィン付きベルトコンベヤの上にセットする。タンクに投入された資材は二つの流れでコンベヤで運ばれる。心土肥培耕プラウのタンクに投入されるところに桟付きの衝突板を設け、段差を作り流れを変えることで混合するようにした。
単純な構造の割には比較的よく混合し、資材供給の時間も少なく高能率である。しかし、これで問題解決と思いしや、そうではない。現場から混合時の埃の発生がはげしく、作業員の人体の安全衛生上好ましくないというのである。
カバーを工夫することである程度改善できたが、炭カルは粒度が細かいので、風のある日などは何をやっても防げるものではない。これにはすっかり往生してしまった。現場では、ある程度混合すれば、均一散布はでき、散布の過程で混合も行われることならと混合装置を取り外してしまう始末である。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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