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農業技術進化系

2007年注目技術 「光独立栄養」を挿し木に応用した新技術 林業だけにとどまらず様々な農業分野に応用可

当社のパルプ用に植林しているユーカリの品種は生長が早く、もっともパルプ効率が高い。しかし挿し木による増殖は難しく、やむなく実生苗による植林で行なわれているのが現状だ。
 当社のパルプ用に植林しているユーカリの品種は生長が早く、もっともパルプ効率が高い。しかし挿し木による増殖は難しく、やむなく実生苗による植林で行なわれているのが現状だ。その一方で、産業植林の世界的な流れは、精英樹によるクローン植林が主流。そこで、生産性とパルプ材の品質向上を図るために、世界初となるユーカリの組織培養による植林用クローン苗の生産技術を開発した。その発根工程を応用したのが今回紹介する「挿し木新技術」で、実践的な技術として使える。

 自然界の植物は、太陽の光を浴びて炭酸ガスと水から糖を作り(光合成)、この糖をエネルギー源として生長する。この植物の生きる仕組み、いわゆる「光独立栄養」を挿し木に応用。植物を無糖・無機塩のみとした培地に、光(植物種により光強度や波長を選択)と炭酸ガス(光強度により1000~3000ppm)を制御できる室内で、光合成能力を最大限に引き出す環境を与えてやる。この環境下で挿し木を行うと、挿し穂が「光独立栄養」によって生きようとするため、生長に必要不可欠な根が数多く放射状に出てくる。また、大きな特徴として、野外環境を再現しているため、殺菌しないで野外の植物もそのまま利用できる。

 これまでの試験で、通常の挿し木技術では発根が難しいとされている数多くの木本類や草本類について、当社の新技術による発根が確認されている。現在は、まだ樹種や品種によって発根率の差はあるが、これまでのところ、まったく発根しなかった樹木は一本もない。たとえば、効率的な増殖方法がなく、ヤブキタ種一辺倒だった茶品種の世界にあっても、これまで見捨てられていた茶品種などの挿し木増殖へも応用できる。果樹栽培でも台木のクローン化による品質の安定化が図られる。自根栽培による味質改善が期待され、農作業面でも難発根性の矮性台木(中間台木)から直接発根させることができる。リンゴなどで用いる二重接木法の必要がなくなり、果実の出荷までの期間の短縮を図る可能性も考えられる。また、大量の苗木を短期間に準備できることから、特産品や産地化作りにも役立てられる技術であると考えている。

 当社は、これらの技術を用いて新たに事業化する「挿し木苗事業」の円滑な立ち上げと迅速な事業拡大を目的として、06年4月に「アグリ事業推進室」を設置。また、小松島工場(徳島県小松島市)内の挿し木苗事業用施設にて茶、丸葉ユーカリ、サクラなどの生産を開始している。

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