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農業技術進化系

精密畑作農法 情報を栽培管理にフィードバック、高度で省力的な次世代型農業技術

  • (独)農研機構 中央農業総合研究センター 高度作業システム研究チーム 宮崎昌宏
  • 第2回 2007年04月01日

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生産性の向上と環境保全を同時に実現させる。その回答のひとつが、「精密農法」である。精密農法の概念は80年代末に欧米で考案された。土壌の状況や作物の生育状態など、圃場におけるばらつきを管理。そのために様々な計測装置が利用され、収集された各種データをもとに生産計画が作成される。たとえばばらつきに対して適切な肥料・農薬の散布量を割り出すことで、最適量を施すことが可能になる。結果、コスト削減につながり、生産性を維持・向上させることができるのだ。欧米では、すでに実用技術として生産者に受け入れられている。一方、日本においては、約10年前から研究が行なわれてきたものの、精密農法への関心はそれほど高くなかった。というのも、欧米に比べて圃場規模が小さく、かつては必要コストと成果のバランスを考えるうえで導入が非現実的であったからだ。だが、最近になって、農地の大規模化の進展により、そのメリットが見直されてきた。ここ数年、国内の研究機関で日本型の精密農法を目指した開発も増えており、成果も徐々に出始めている。ここでは、2003年度から(独)農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構)が開始した「精密畑作」プロジェクトを中心に、研究者がその実例を紹介する。こうした研究テーマが生産現場で〝使える〞技術にまで成長できるかは、開発者と手を組める農業経営者の実証力いかんによる。
 (独)農業・食品産業技術総合研究機構では、2003年からプロジェクト「消費者に信頼される生産体制を支える精密畑作農業技術の開発」を開始した。畑作物を対象として、土壌特性や前作の品質・収量、作物生育状況などの情報を圃場の栽培管理にフィードバックして、品質の安定化、肥料・農薬等の資材投入量削減を可能とする精密圃場管理技術を開発している。これにより、収益性の向上と環境負荷の低減を両立させるとともに、栽培管理履歴や篤農的栽培管理技術の情報等を蓄積。消費者ニーズに貢献しうる知識集約型の高度で省力的な次世代型農業技術の実現を目指す。

 我が国では、食料自給率の向上とともに、消費者に信頼される安全・良質な農産物の供給体制の確立が喫緊の課題となっており、生産現場においてこれを支える環境保全型の作物生産技術の開発、先端的な経営体の育成、消費者への情報提供が求められている。しかし、麦・大豆では、品質のばらつきにより安定した供給が困難であり、野菜・茶では、品質確保を優先するため、肥料・農薬の削減が進まない状況にある。さらに、農業従事者の高齢化、後継者難により篤農的栽培管理技術情報の次世代経営体への継承が困難となりつつある。これらの問題を解決するため、GISやGPSなどの情報技術を活用した、消費者の信頼を得る新たな農法を確立していく。

 本プロジェクトでは、主に次の研究テーマで開発が進められている(次頁参照)。全体として開発は概ね順調で、すでに市販されているものもある。今後は、機器開発と同時に実証研究を通してそれらの機器を活用した処方箋作成まで研究を深化させていきたい。

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