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海外レポート

GM大豆9割の米国から日本の農業を見る

 ヨーダー氏によれば、NON‐GMでは播種前と播種時そして栽培期間中も適期を見計らって除草剤を散布する。それでも、天候によっては適期を外して思い通りの効果が出ず、減収につながる。大豆300ha、トウモロコシ200haという面積(これでも中規模以下)を考えれば、適期をはずした時の雑草処理はさぞ大変だろう。

 それに対してGMの場合には、トウモロコシでは播種前の広葉用除草剤と15センチくらいに伸びた時にラウンドアップをかけるだけ。厳しく散布時期にこだわらなくても確実な効果が得られるし、薬害もない。

 本誌読者であれば、作業適期に融通が着くことが、どれだけ畑作農業の労働配分に余裕が出て、経営を容易にするか想像できるだろう。さらに、米国での燃料価格の高騰は農家経営の大きなコストアップ要因となっている。63頁に出ているガソリンスタンドの料金看板の写真を見ていただきたい。レギュラーガソリンが2.59ドル/ガロン(3.8リットル)とある。1ドル=120円としてリットル当たりに直せば約82円。日本人からすれば安いと思うが、聞くと数年前の2.5倍から3倍はしているという。もともと燃料代の安かった米国であればこそ、この燃料代の値上がりは農家経営にも大きな影響を与えているのだ。ヨーダー氏はトラクタの走行回数をいかに減らすかが収益に大きく影響するわけで、その意味でもGMは大変価値があるという。筆者の「プラウはかけないの?」という問いに対しても、必要だとは思っているが、燃料代を考えるとプラウ耕はできないと話していた。

 さらに、日本でよく言われる、「GM種子になると種子会社に支配されるのではないか」という問いに対して、ヨーダー氏はナンセンスと笑った。

 農家は経営の収支や売れ行きをも見計らい、経営者の判断で種子を選択しているのである。逆に、栽培だけでなくIPハンドリングなどの面倒さがあっても、儲かると思えばNON‐GMを選ぶ人もある。さらに、大豆であれトウモロコシであれ、多様なメーカーが販売競争をしている。しかも、除草剤耐性や害虫耐性というレベルを超えた品種開発の競争が行われているのである。最終的には消費者が選択し、その前に生産者にとって利益の出ない技術など普及するはずもないのだ。

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