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【乾田直播による水田経営革新】
拡大する愛知県の乾田直播
- コメ産業コンサルタント 田牧一郎
- 第16回 2007年06月01日
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関係者の協力で確立された不耕起V溝直播栽培の技術。
愛知県農業総合試験場を訪問し、作物研究部の小出俊則・林元樹の両先生から乾田直播栽培技術について説明をうかがった。愛知県は日本農業の先進地であり、その農業技術開発の中心を担ってきたのが、農業総合試験場である。研究機関としての豊富な技術蓄積があり、直播システムの開発、そして技術マニュアルの公開もできている。
説明してくださった林先生から、この技術は現場との密接な関わりから生まれたものであるとの説明があった。生産者からアイディアや要望が出され、機械メーカーの試行錯誤による作業機開発、普及センターの努力など、関係者がそれぞれの役割を果たして知恵を集積した結果、ここまで安定した技術に仕上がってきたのだという。下に示す表1〜2から、この直播栽培は確立された技術であることがうかがえる。大きな特徴は次の5点である。
(1)代かき作業
冬季代かきによって刈り跡の稲わらや稲株・残渣を土中に入れ、表面をきれいにする。これが播種作業に重要な役割を果たす。代かきは冬季とはいうものの、前作の収穫後から播種までの長い期間の間に行なえばよい。代かき作業の本来の目的である漏水防止にもなる。
(2)乾田化
代かき作業の後は溝切りをして雨水対策を行なう。乾田状態で種子を播くため、本田を乾かさなければならない。雨水を早く排水し播種作業をスムーズに行なうため、そして播種から発芽苗立ちまで順調な生育を確保することを目的としている。
土中に播いた種子は、接触している土からの水分や、降雨の水分によって発芽状態になる。しかし水中の種子は、2~3日で発芽障害を起こしてしまう。降雨による表面水をいかに早く排出するかが、収量にも直接影響する。
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田牧一郎 タマキイチロウ
コメ産業コンサルタント
1952年福島県生まれ。74年、米カリフォルニア州の国府田農場で1年間実習後、帰国、大規模稲作経営に取り組む。89年、カリフォルニアに渡米、コメ作りを開始する。同時に始めた精米会社で「田牧米」を作り、米国内にとどまらず世界中の良質米市場にブランドを定着させた。現在は、コメを生産しながら、コメ産業コンサルタントとして活躍する。
乾田直播による水田経営革新
乾田直播技術が水田経営を抜本から変える革新的なものと言えるのはなぜか。低関税時代を目前に控えた今、低コスト・省力化を超えたその経営的意義を、すでに同栽培を実践している稲作経営者の取り組みや世界のコメ業界の動向を通して紹介する。
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