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海外レポート

GM大豆9割の米国から日本の農業を見る

今回でアメリカ穀物協会の招待による米国中西部の視察報告も最終回である。その視察を踏まえてわが国における遺伝子組み換え作物生産とその技術開発の現状を考えてみよう。まだ遺伝子組み換え食品に対する拒否感が多いといわれる。経営はあくまで顧客の要望において成立するものである。その意味では、わが国の市場で遺伝子組み換え作物の商業生産が実現するためにはさらに多くの年月を要するようだ。しかし、我われはすでに米国産の遺伝子組み換え大豆を原料とした食品や飼料を与えられた畜産物を当たり前に食べているのだ。にもかかわらず、国内生産には取り組めない。たしかに日本のような経営規模の小さな農業にはGM作物を作っても意味がないという声もある。しかしながら、米国の現実を見ればこそ、筆者はわが国でのGM作物生産に対するアレルギーはぜひとも払拭されるべきだと感じた。(昆吉則)
立ち遅れる日本のGM技術

 すでに米国ではGM作物の商業生産が始まって10年が経つ。単なる除草剤耐性に始まった大豆はさらに高オレイン酸大豆などの食品としての機能性を持つ品種に除草剤耐性を組み込んだり、害虫抵抗性その他の機能を併せ持つものが標準品種になっていたりしている。さらに、将来の食事情や人々の健康を考えた多様な食品や薬品の開発につながる育種がなされているのだ。そして、何度も述べたとおり、米国の大豆栽培では89%がGM品種なのである。

 しかし、わが国ではGM作物の商業生産はもとより、試験研究機関における試験に対しても反対運動家たちの圧力が存在し、メディアの多くも科学的な情報提供努力をしているとはいえない。

 わが国では、年間に88万件以上の交通事故が発生している。そのうちの死亡者は6352人にも上る(平成18年)。飛行機事故や鉄道の事故の例も、我われの誰もが知っている。でも、わが国で栽培中に農薬を使った農産物を食べて死んだり、健康障害が出たという例があるだろうか。皆無なのである。にもかかわらず、わが国での管理された農薬利用に対する不安を声高に語る人々もいる。遺伝子組み換え作物を使った食品を食べて健康障害が生じたという科学的根拠のある事実はあるだろうか。それも皆無なのである。


 

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