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これなら分かる「土と肥料」の実践講座有機質肥料(2)

 また、有機肥料であるので、石灰、苦土、微量要素はもちろんですが、他に、ビタミン類、アミノ酸、核酸類を含んでいるので、高品質な肥料といえます。それは、核酸、アミノ酸、ビタミン類は作物生育を活性化させることが知られているからです。ビタミン類は根の細胞分裂を促し、作物の病気に対する抗病性を増す働きをします。また、リボ核酸中に含まれるカイネチンは葉緑素を保持する働きがあることから、野菜の鮮度保持に有効です。アミノ酸は、一部は直接根から吸収されて作物のタンパク合成に寄与します。

 以上が乾燥菌体肥料の特長ですが、微生物の体を形成しているものということで、使ってみると以外な効果や現象が起こる事例の報告があり、今後大いに期待してよい有機肥料でしょう。


汚泥肥料


 今や日本中に多くの下水処理施設ができて、そこから発生する汚泥の量は大変なものがあります。下水処理場で発生する汚泥そのものは、水分含有率が98%程あり、そのままではどう利用することも出来ません。

 そこで、これに石灰と鉄を加えて凝集させる方法と高分子凝集剤を加える方法があり、これらの脱水助剤の働きをかりて、プレス式の脱水機にかけると、水分70%ぐらいの脱水ケーキというものになります。これは、粘土細工に使う粘土のような状態と考えればよいでしょう。この脱水ケーキをボロボロにほぐし、乾燥して製品とします。チッソ含有率は、1~7%と幅が広く、リン酸も1~10%程度となります。これは汚泥が、様々な雑排水を集めたものから成り立っているということの証明でもあります。また、汚泥に含まれる有害成分についても、ヒ素50ppm以下、カドミウム5ppm以下、水銀2ppm以下(乾物当り)という規制があります。衛生的な面でも下水発生物ということで病原菌、寄生虫卵の含有が考えられますが、これは乾燥過程で死滅するということです。問題は、凝集過程での石灰の使用であり、これは、土壌中に充分石灰があれば当然過剰となってしまうので、表示をよく見て使用することが必要です。

 下水汚泥肥料に関するアンケートが下水処理場を通じて行なわれているので示します。

 これによると、希望価格帯は20kg袋入りが、100~600円と安いところにありますが、今後の価格推移としてはこんなところかも知れません。流通・輸送の改善、製品への理解が深まれば十分可能と言えるでしょう。


加工家禽糞肥料


 ニワトリやウズラの糞は、これを乾燥しただけのものでも使えるのですが、これに硫酸と廃糖蜜アルコール発酵濃縮廃液を混合して火力乾燥したものや、家禽の糞を熱風乾燥したものなどがあります。悪臭を防止するという点で大変に工夫されているのが特徴です。これらは、加工されているので普通肥料として流通しています。全チッソ2・5%以上、全リンサン2・5%以上、全カリ1・0%以上の保証となっています。この三要素の他に石灰、苦土、微量要素を含有しています。チッソは有機態とアンモニア態が半々ぐらいで肥効がすぐれたものとなっています。ただし、加工と流通コストによって、単なる家禽糞に高い金を払う気がないという人にはすすめられません。

 以上、乾燥菌体肥料、汚泥肥料、加工家禽糞肥料とみてきましたが、特に今後その処分に問題のでてくる汚泥に関しては、農業界や緑化事業でしか活用できないので、含まれる有害物質の内容表示や、末端価格、現場での施用法を地域の下水処理場と一帯となって取り組むのであれば解決の道はあると思います。そして農業こそがこの課題解決の答えを与える場であり、農業者にとっても、新しい農業経営のチャンスに出会えるフロンティアと言えるのではないでしょうか。

参考文献:『肥料便覧』(農文協)

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