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部分深耕ロータリの上手な使い方
種子イモの植付け、あるいは播種に際しては耕した場所を充分に鎮圧することを忘れてはならない。ある農家が、ナガイモの種子イモを植付けるに当たり、足で植付床を踏んだら初期生育も良好で、素性のよいものが増収できたと言うのである。
早速、実験をしてみることにした。足で一回だけ踏んだ区、二回踏んだ区、それに無処理と比較すると明らかな差である。二回区がもっとも良い成績であった。
何故かを分析してみると、17cmの幅とは言え、1mも掘削しているのである。植付床は過膨軟の状態になっている。そこに植付けるだけでは、土壌水分が不足するばかりでなく、土壌が降雨その他で落着く迄に絶えず動くのである。それでは安定して根を伸ばすことはできない。むしろ、根が傷められるばかりである。
そればかりではない。降雨が続くと、水は高きから低きに流れるように、土壌の硬いところから軟らかいところに流れるのである。植付床に侵入した水の量が多くなると中間に陥没が発生して空洞ができることがある。当然、この場合、コブイモなどが発生する要因になる。植付床は軟らかいのがよいでのはなく、適正な硬さを必要とするのである。
そこで植付け機の開発に当たっては、鎮圧輪を設け、人が二回踏んだと同じ程度に鎮圧するようにした。見事な成果であった。ゴボウの場合も同じである。部分深耕ロータリに鎮圧輪を付すか、播種機に鎮圧輪を付すなどして適正な硬さを保つようにしなければならないものである。
何事にも理屈があり、理屈を弁えた手当をすることが大事である。ゴボウの施肥にも理屈がある。ナガイモは横に根が伸びる性質があるので、深さ30cm程の全層施肥とするが、ゴボウの根は横には這わない。養分吸収根は縦に植付床に混和されることが望ましい。
一般の野菜と同じように、播種する時に種子の下に施肥することでも差し支えないが、理想的な施肥となると、植付部の上層部に若干量が多く、下層に行くに従って少なくなるように混和することである。
そんなことが可能か、やってみるとそれ程難しいことでもなさそうである。ホイール型の部分深耕ロータリであると、肥料の落とす位置を軸に近づけることによって上層部に多くすることができるとされている。初期生育が順調であり、収量が多く、その上に分岐根が少ないと報告されている。
化学肥料無しには農業は成立しないであろう。しかし、野放図に使ってよいことにはならない。経済的負担はもちろんのこと、地下水汚染の危険性もあるからである。必要最小限の肥料で最大限の効果を発揮させる工夫は農業者の義務と言えよう。機械の特性を知って、それを最大限に引き出すことが大切である。
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村井信仁
農学博士
1932年福島県生まれ。55年帯広畜産大学卒。山田トンボ農機(株)、北農機(株)を経て、67年道立中央農業試験場農業機械科長、71年道立十勝農業試験場農業機械科長、85年道立中央農業試験場農業機械部長。89年(社)北海道農業機械工業会専務理事、2000年退任。現在、村井農場経営。著書に『耕うん機械と土作りの科学』など。
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