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農業経営者ルポ

後継者は誇りと夢と能力ある者に

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第24回 1997年08月01日

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後継者は子供でなくてもよい


 駒谷さんは早くから後継者は子供達である必要はないと言い続けてきた。現在、弟の克明氏の子供と駒谷さんの娘夫婦が就農し、長男も来年から入りたいと言っている。父に「お前は農業をやれ」と言われて反発した駒谷さんだが、子供たちには「お前たちの望む仕事を選べ、駒谷の子供だから駒谷農場を継げるわけではないぞ」と言ってきた。

 駒谷さんは「得手に帆上げる」仕事をできるのが人生の幸せであり、継ぐのは事業でも財産でもなく親の誇りだと考えているからだろう。だから、子供が無理して農業を継ぐことはない。そして、駒谷さんに取って「得手」は農業であり、それを経営するという役割だった。

 そして、こうもいう。法人である限りそれは公のものなのであり、作った限り潰してはならない。だとすれば、その能力の有るもの、そしてそれを発展させる力のある者が継がねばならない。

 こんな逸話もある。現在、様似町の牧場を管理している娘さん夫婦のことである。

 娘さんは子供の頃から死んだ子牛を見て獣医になるというような動物好きだった。そして酪農学園大学に入り、そこで現在のご主人と行き合った。そしてある夏休み、駒谷さんに「お婿さんを連れてくるから牧場をやらせて」と言ってきた。

 駒谷さんの答えは「駄目だ」である。

 そして、駒谷さんはこう話した。

 「お婿さんなどと言うな。婿を取ったらお前は生意気になる。彼の許に嫁に行くのだ。夫婦で獣医になるのなら、一人前の仕事ができるようになって、夫婦で駒谷農場に就職しろ」

 二人は共に獣医師の免許を取り、ご主人は最初は実家のある長崎で獣医師として仕事をし、現在は娘夫婦が様似町の牧場を管理している。

 駒谷さんは、中小企業も農業も同族である甘えが崩壊の原因なのだから、子供であろうとも経営者として不適任であれば、株主として止めさせなければならないのだと話す。そして、後継者たちに駒谷さんはこう言う。

 「自分と同じことをしたら駄目だ。時代は流れていくからだ。自分のやりたいことをやれ。しかも、時代に竿さすのではなく、その中で自分の役割を見出すのだ」と。

 経営者とは、合理的な思考力を持ちつつも、ただ“良い作(一時の儲け)”を求めて土を肥すことに専心する者ではない。常に新たな農地を拓き美田に変えていくこと(永続性のための経営基盤の構築)を己れの役割として自覚し、“作”はその結果と考えることのできる人々なのである。まさに未来のために土を作り、美田を作る意志、開拓の志を持ち、そしてそれをなす者としての誇りのために生きようとする者なのである。そして現在とはすでに過去の結果である。現在にしがみつくこととは過去にしがみつくことなのである。未来のための今を考えるのが経営者の仕事なのだ。

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