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特集

土壌診断、樹液・土壌溶液分析で何が解り、そして解らないのか?

 この土のコロイドがどのように何を吸着しているかを示したのが、土壌分析項目の交換性石灰、交換性苦土、交換性加里の数値です。そして、この吸着させるイオンの総量、つまり容量を示しているのが、塩基交換容量と呼ばれているもので、CECと表現する場合もあります。これは土壌の保肥力を表わす数値で大切な土の目安です。

 土のコロイドに吸着しているのは、塩基と呼ばれる陽イオンの類と、他に塩基ではない陽イオン、つまり水素イオンが吸着します。この吸着している塩基と水素イオンの比率を塩基飽和度と称していますが、これが土壌のpHと関係して大事な点でパーセントで表されています。

 そして、この土のコロイドに吸着する塩基は何でもくっついていればよいというのではなくて、石灰が約60%、苦土が15%、加里が5%程度というように、それぞれの比がありますが、これが塩基バランスというもので、これをどのように保つかが、作物の栄養生理と関連して大事なことになってきます。

 また、リン酸成分については、その形態が作物に吸収利用されやすいリン酸石灰の形態と考えられており、これを分析で数値としてとらえられるのが有効態リン酸という項目です。この有効態リン酸が乾いた土壌100g中に50mg程あればリン酸の状態はよしということになります。

 以上が土壌分析から推測する土壌の状態なのですが、作物の根が栄養分を吸収するのは土壌の液相からであり、この液相の状態をどのように保っておくのかが、土壌コロイドと直接関係していることなのです。液相に溶け込んでいる無機養分のバランスこそ、作物の根の健全と作物体そのものの健全を維持することなので、土壌のコロイドに吸着しているイオンの状態は間接的に土の液相の化学性を左右しているのです。

 この液相というのは、土壌溶液のことであり、土壌溶液が作物に適した状態になっていればそれでいいのですが、そのためには、どうしても土のコロイドの状態が適正域の管理になっていないとだめだということです。また土のコロイドの状態が適正域であるだけでもだめで、乾燥すれば土壌溶液の濃度は上昇してしまうし、過剰施肥でも当然、溶液濃度が上昇するのです。

 また土壌分析で注意する点ですが、まずECについては、土を採取して、これに水を加え振ることによって強制的に反応させていくのですが、この際、硫酸カルシウムや炭酸石灰が溶け出してEC値を上げてしまうことが現象としておきるので、この点が現場の数値と違うことになります。

 さらに土壌化学分析では、分析サンプルを完全に100%薬品と反応させることが分析操作の条件となっているのですが、ここがよく考えないといけないところです。実際の現場では、物理性の悪さが主ですが、耕起が不十分だったり、水分の過不足があって土壌が100%反応することはなく、また根の吸収表面積もごく少ないものです。また生物性の役割もそれぞれ圃場によって差が当然あり、分析では完全といえるような土壌でも、このように他の阻害要因があれば、その分、土壌は生産力を落とすことになります。

 化学分析では全く同じ数値として示されるから、同じ生産能力の土壌かというと、同じ場合もあれば同じでない場合もありうるということです。この差の判定は、そこに作物を栽培してその様子から判断するしかないのです。

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