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自分の畑は自分で診断する

これなら分かる「土と肥料」の実践講座韓国の土と施設園芸

 まず、パイプハウスのフレームが曲がったり、斜めになったようなものは全く見あたりませんでした。そして、もっと素晴らしいことは、被覆材の軟質ビニールがきれいであるということです。日本の施設園芸地帯に行くと必ず、古くなったビニールをそのまま長期間使用している例をみるのですが、そのようなものは一つも見あたりませんでした。

 これは日本の農業資材の流通が複雑で、割高の農業用ビニールが売られているのではないかと思いました。

 また、ハウス内の換気にも充分注意がされている様子で、パイプハウスに天窓が取り付けてある例もありましたが、台風の被害がなければ日本にも普及させたい工夫です。

 次に、このツアーに参加して最も感心した事ですが、施肥と灌水の体系が、日本より十年先に進んでいることでした。まず、施肥体系は液肥の定着ができており、専用液肥の流通もできている様子で、各種の専用液肥をみることができました。これは粉末タイプであり、日本では水耕やロックウール耕に使うものという傾向が強いもので、まだ土耕に液肥は必要ないという考え方が多く、化成肥料や配合肥料の使用は、結局、高塩類土壌をつくってしまっていることなので、この点韓国を見習う必要があると思いました。

 この施設における野菜作と花崗岩風化土壌の関係は注意点が多く、まず施設内での野菜類は、急成長するため、急速な石灰やホウ素の吸収を必要とするということと、これに対して、花崗岩の風化した土は、元々、石灰分をはじめとする塩基類が欠乏しており、これが高塩類になるとますます、石灰、ホウ素の欠乏をおこすことになるので、この対応には、液肥体系による適正濃度の施肥が必要で、その意味でも野菜の良質生産に徹しているといえます。

 また、この液肥施用を完全なものにする条件として点滴チューブがありますが、この点滴チューブとこれに肥料を希釈して送り込む肥料希釈器の両者が普及しており、施設土壌を養液管理するという日本ではまだ一部でしか取り入れられていない方式が、視察先で何カ所も見られたことは驚きでした。

 この原因は、点滴システムのメーカーであるイスラエルのネタフィム社などの努力の結果だと思いました。

 日本は施設園芸の総面積は世界でも上位であるにもかかわらず、基本技術が定着していかないこの理由は何かと考えると、生産者の姿勢が回りの情報に対して柔軟であることかもしれません。

 これは、工業や商業においても、韓国の若い人のパワーの強力さを各所でみましたが、まさに新興国の怒涛のような流れが、農業も共に引っ張り上げているようにも思いました。日本も高度成長期に施設園芸が急速に普及していったのですが、そのときは、残念ながら点滴チューブと液肥希釈器、そして液肥の体系がなく、今日の日本の施設土壌を高塩類集積の過飽和土壌にしてしまったのではないでしょうか。

 こんな具合に、土壌、肥料に関しては見習う部分が多かった感ですが、農薬の使用量は相当多いらしく、除草剤も含めて多投のようです。野菜を生で食する人々ですので、この点に気がついた人達は有機肥料や無農薬栽培に挑戦しているようですが、まだごく一部のようです。

 ソウル市という狭い地域に、2000万人という東京の2倍の人口が一極集中して、田舎は過疎の一途を辿るという、日本の高度成長の辿った道と同じ道か、いやその何倍かのスピードで農村人口は減っているのです。都市と農村とのアンバランスは日本より激しいのかもしれませんが、農業の合理的考え方は技術や経営観を含めて、韓国は日本より上手に農村再編成をするように思いました。

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