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【今年の市場相場を読む】
新しい切り口で面白い発展が見込まれる野菜を調べる セルリー/カブ/コマツナ/ウド
- (株)農経企画情報センター 代表取締役 小林 彰一
- 第21回 1997年10月01日
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セルリー 夏場に少ない不思議を解く 「食べられる」ことが重要
【概況】
セルリーは、東京市場では年間1万3千t前後の流通量がある。この数字はトウモロコシよりはやや少ないが、ニラやエノキダケと同じくらい、ミニトマトよりやや多いという位置づけにある。意外に多いのである。
主産地は静岡と長野。長野が夏場を中心(6月~10月)に出回り、その他のシーズンは静岡が主産地であり、両県で七割強のシェア。その他を茨城、福岡、千葉、愛知、山形、香川、北海道などが補完している。ほぼ洋菜の産地がセルリーも手掛けるという分布である。
過去数年の推移をみても、入荷量も単価もほぼ安定している。むしろ、最近の野菜全体の低迷基調を考えると根強く支持されている、という感さえある。
【背景】
業務用が主体の品目だけに、入荷は安定し、量の増減が高安に連動しやすい特性があるが、不思議なのは夏場を中心に入荷が少なく冬から春にかけての数量が多いということである。サラダ材料という性格から、夏場に消費も供給も多いと思われがちだが、シュンはむしろ春で、東京都内の季節産地は3月、4月しか作らない。
本来、独特の強い匂いは季節の香りというには強烈であり、暑さに対する強壮剤的な役割を持っているようだが、日本では結果的に春を思わせる季節野菜という性格が支持され、しかも香りの少ない品種改良が施されている。冬から春にかけてのシーズンに最も消費が多いという現象は、春の先取り、というファクターが背景にある。
【今年の対応】
日本のセルリーは水っぽいというのが、外国の人の感想である。カリフォルニア産などに比べて香りが少なく、繊維も軟らかいからだが、それが日本人向き、という先入観が品種改良側にも生産者にもあるのだろう。
そんな意味も含めて、日本のセルリーは「食用ではない」と断言したい。食べておいしくないからだ。東京・江戸川区のセルリー生産者は、ほぼ4月一ヵ月しか出荷をしないが、この一ヵ月を一年間待って購入し、他のシーズンは食べない、という消費者が大勢いる。こだわって作られたシュンのセルリーは、芳醇な香りと豊かな食味があるために、消費者はそれを味わうために一年間待ってくれるのだ。おいしいセルリーを作れば、消費は自然についてくる。
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小林 彰一 コバヤシショウイチ
(株)農経企画情報センター
代表取締役
青果物など農産物流通専門のジャーナリスト。(株)農経企画情報センター代表取締役。「農経マーケティング・システムズ」を主宰、オピニオン情報紙『新感性』を発行。著書に、『ドキュメント青果物市場』、『日本を襲う外国青果物』、『レポート青果物の市場外流通』、『野菜のおいしさランキング』などがあるほか、生産、流通関係紙誌での執筆多数。
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