ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

農業経営者ルポ「この人この経営」

これぞ韓国の農業の強さ!志高き生産者と農協組合長の二人三脚

韓国東北部の江原道春川(カンウォンドウチュンチョン)市にある新北(シンプク)。高冷地トマトの産地として全国的に知られており、3年前から日本へも輸出している。 江原道は韓国の中でも山の多い地域だ。韓半島を南北に貫く「太白(テペク)山脈」沿いに険しい山が続く。日本でいえば東北地方だ。新北も周囲を山に囲まれた中山間地。地域一体を昭陽江(ソヤンガン)という川が流れている。いまは上流にダムがあるが、せき止められる前の川の氾濫で、土壌や地下水には豊富な栄養分が蓄積されている。一日の気温差もはげしい。こうした条件をいかし、新北では約30年前からトマトが作られてきた。先人たちの築いた基盤のおかげで、トマト栽培にかけては技術の高い農家が集まっているといわれる。なかでも白敬烈(ペクキョンヨル)さんの技術力は高く、その名は日本にまで届いているという。
人がやった後では遅い


 「彼は日本の種苗メーカーの間で有名な人です」白さんを紹介してくれた韓国農民新聞の記者からこういわれて「相当やり手な農家」を勝手に想像していた。ところが実際に会った白さんは、優しそうな笑みを浮かべ、ひょうひょうとしていた。

 ハウスを見せてもらった。以前はキュウリも作っていたが、ここ数年はトマトとミニトマトに専念している。いまや韓国でできるトマトの9割は日本の種によるものだ。ミニトマトに至ってはほぼ100%がそうだ。白さんの作るトマトは「ろくさんまる」と「桃太郎」、ミニトマトは「サンチェリー」など。

 ハウスはバラエティに富んでいる。4000坪のハウスのうち、800坪が養液栽培、残りが土耕栽培。土耕の一部は養液土耕のスタイルをとっている。

 「養液栽培は味がよくないといわれているけど、そうは思わない。将来的には土耕と同じような品質のトマトができると思う」

 養液栽培のハウスを訪ねると、一つの列は密植栽培になっており、通常の2倍の苗が植わっていた。国内ではまだ誰もやっていないという。「まだ学界でも発表されていない。でも、発表されて他の人がやった技術をマネするようでは遅いからね」

 「最初はいやいや農業をやっていたんですよ」。白さんは照れながらこれまでの道のりを話してくれた。

 学校を出てすぐに両親の手伝いでトマトなどを作り始めたものの、全く魅力を感じなかった。10年間の悶々とした生活から抜け出すため、1980年から中東に出稼ぎに行く。韓国では外貨獲得のため、70年代から建設ラッシュの中東へ労働者を大量に送り込んでいたのだ。

関連記事

powered by weblio