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【知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ】
ベルギー 環境負荷を抑えるヘンプクリートが新たな需要拡大の鍵を握る
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第20回 2019年07月31日
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エコ建材のお墨付きを得てヘンプ・ブロックの量産化へ
ベルギーでのヘンプ栽培の復活に貢献したのは、非営利団体ルボンベヴェルテだ。政府に働きかけ、96年に試験栽培をスタート。ブリュッセル自由大学が初期の研究を担った。その研究成果を受けて、シャンブルエコ社(ChanvrEco社)は07年に100万ユーロ(約1億6000万円)を投資して、ヘンプの栽培・加工、ヘンプ・ハウスで使われる壁材、通称「ヘンプクリート」の製造販売を開始した。
ヘンプクリートは、ヘンプとコンクリートから成る造語で、欧州産の水硬性石灰とヘンプのオガラ、水とを混合して漆喰壁のように固めたものである。同社では、繊維付きのヘンプの藁束を砕いたチップ状のものを使っている。ヘンプ素材を壁材に使うことで、高断熱性、吸音性、蓄熱性、調湿性、意匠性、耐火性、耐害虫性、低環境負荷性に優れた快適な家となる。これらの機能は、ヘンプのオガラが細かい穴を有する多孔質であることに由来する。さらに、既存の住宅用建材よりも軽くて、断熱性が高い(図2)。ヘンプクリートは、木造や鉄筋造のどちらの住宅にも、壁材、屋根、天井裏、床材、間仕切り、左官材などのあらゆるところで利用できることも強みである。
従来のヘンプクリートの施工方法(図3)は、建築現場で原料の石灰とヘンプ、水とを混合し、専用の吹き付け機を用いていた。欠点は、壁面が乾燥するまでに30日以上かかり、プレハブ住宅に比べて工期が長くなることだった。この問題を解決したのが、14年に設立したイソヘンプ社(IsoHemp社)である。工場であらかじめヘンプクリートのブロックを製造し、建築現場で組み立てる工法を提案した。ブロックの大きさは長さ60cm、高さ30cmで、厚さは6種類(図4)。この方法なら、施工から約1週間で乾燥するため、従来の吹き付け工法より大幅な工期短縮が可能となった(図5)。
ただし、このブロックは日本の住宅で使われているコンクリートの圧縮強度21N/と比べると、0.3N/平方mmと強度が足りず、構造材には使えない。30cm厚のブロック1個当たりの重量は23kg、価格は約1800円。総床面積52平方mほどの小さい家で、壁厚30cmで施工すると、1176個のブロック(49立方m分)が必要で、その費用は約211万円となる。ヘンプのオガラ原料で見れば、約5t、約1ha分に相当する。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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